18・「好き」よりも「愛してる」よりも、ただ君の『特別』になりたい。
「なまえー」
『どうしたの?ブン太』
「や、何も」
『何それ今名前呼んだでしょ?』


二回戦が終わって俺もなまえも裸のまま毛布に包まれている。
もう裸なことに抵抗は無いみたいでなまえは俺の方を向いて微笑んだ。


「俺のワガママもう一個聞いて欲しいんだよ」
『なぁに?』
「何だよ無条件に聞いてくれるのかよ」
『ブン太のワガママなら大丈夫だよ』


今日だって散々俺のワガママを聞いてくれてんのに内容を聞かずに了承するなまえがもうほんとすげぇ好き。
俺にはもうなまえしかいないんだと思う。


「なぁ、んじゃお前は俺のことどう思ってんだよ」
『え?』
「ちゃんと言葉で聞かせろってなまえ」
『えぇ。今日はちゃんと言ったよ』


何でそこで言い淀むんだよ。
あんなんじゃ足りねぇの。
もっと俺にお前の気持ち聞かせろよ。


「もっかい」
『ブン太のこと、好きだよ』
「違え。もっと違う言葉がいい」
『えぇ!?』
「お前の気持ちもっと沢山聞きたいんだよ」


そっとなまえの頬を促すように撫でると擽ったいのか困ってた顔が和らいだ。
今日は俺のワガママ聞きっぱなしだよな。
でもどうせならこの際全部聞いてもらいたかったんだ。


『やっぱり何かあったの?』
「そんなんじゃねぇの。俺単にお前のことすげぇ好きでそれこそもうなまえがいないと駄目なんだよ。さっきも言ったろ?」
『生きていけないってやつ?』
「おお。だからお前はどう思ってんのかなって」
『そんなの決まってるよ』
「だからその内容を俺は聞きたいんだって」
『恥ずかしいよブン太』
「やだ」
『えぇ』
「なまえ頼むから」


さっきは普通に『好き』だっつってくれただろ?何で今更そんな照れるんだよ。
俺の無理なお願いになまえは再び困り顔だ。
でもそうやって俺の言葉に困ってる顔も好き。
俺のために悩んでるんだもんな。


『ブン太楽しそうだね』
「おお、お前今俺のことしか考えてねぇだろい?んなの楽しいに決まってんだろ」
『もー』
「なまえー言わねぇともっかい」
『きょ、今日はもう無理だよブン太』
「んじゃちゃんと話せって」


ちぇ。ま、女子のが負担がでかいもんな。
その代わりちゃーんと話すまで寝かせねぇからななまえ。
毛布にくるまれたままのなまえを自分の方へと抱き寄せた。
つーか何で別々の毛布なんだよ。
一つで良かっただろ。用意したの俺だけど。


「なまえー」
『今日変だよブン太』
「俺は今日なまえにワガママ言いたい気分なんだって」
『明日も早いんだよ』
「だから早く寝るためにも話せって」
『ブン太の好きなとこ言えばいいの?』
「んーとりあえずはそこでいいぞ」
『とりあえずって』
「ほら早く」


なんだってそんなに言いづらいんだよ。
戸惑う必要なくね?
俺しか聞いてないんだぞ。
散々迷ったあげく俺の腕の中で俯いたままなまえは観念したように小さく息を吐いた。


『ブン太のことを好きになったのは中学2年の時で、ブン太の周りには常に人が居ていつも楽しそうだなぁって思ってた』
「んで」
『そしたらいつの間にかブン太のことばっかり見てたの。それが最初』
「俺が夏にゼリー貰う前からってこと?」
『うん、だからあの時はびっくりした。まさかブン太と話せると思ってなかったから』
「お前あの頃大人しかったもんな」
『梨夏が羨ましいなぁって思ってたかなぁ』
「あぁ、鈴木も友達多かったもんな」
『うん』


そういやこうやってなまえの話を聞くのって付き合ったあの日以来初めてかもな。
こういうのもちょっと新鮮でいいかもしんねぇ。


「んで続きは?」
『もう。二月のチョコレートの話はしたよね?』
「俺がお前の作るチョコレートが好きだって聞いてショコラティエになるって決めた話な」
『うん。そしたらブン太が大人になってもうちのお店に通ってくれるかなって』
「お前かなり消極的だったんだな」
『だって中3でクラス別れちゃったから』
「そういうことな」
『高校1年になってまた同じクラスになれて本当に嬉しかったの。三年間同じクラスだなんてほんとに嬉しかったぁ』
「俺あの時かなり遊んでたけどな」
『1年の時は勉強に必死だったからあんまり気にしてなかったよ?あんまりお菓子も作ってなかったし』
「そういやそうだったな。お前のお菓子って高校入って3年になるまで食ってねぇわ」


勉強に必死になっててくれて良かったかもしんねぇな。
かなり遊んでたからもしかしたら愛想尽かされてたかもしんない。


『だからね留学から帰ってきて梨夏に話を聞いて凄くびっくりした』
「あー」
『私と始業式に会った時のブン太は変わってなかったから』
「今思うと不思議な話だよな。俺だってお前と普通に話せたの不思議だわ」
『お土産のチョコレート何も知らなかったから無理矢理渡してごめんね』
「いいんだって。あれがきっかけみたいなもんだし」


俺の肩に頭を乗せたままなまえの話を聞いていく。
なんだろ?すげぇ幸せだよな俺。
中2からずっと俺のこと好きだったとかなまえやっぱり凄いわお前。


『それで一年ブン太のために頑張ろうって思って帰ってきたから』
「どういうことだよ」
『一年頑張って無理だったら諦めるって決めてたから』
「そうなると俺達が付き合えたのって青木のおかげだよな」
『そうだね。ブン太があの告白聞いたって言った時は死にたくなったけど』
「お前逃げそうになったもんな」
『ブン太にフラレたくなかったから』


そういうことな。
足りない足りないって思ってたのは身体の繋りとかじゃなくて結局こういうことなのかもな。
や、身体の繋りも俺にとっちゃすげぇ大事だけど。


「なまえ」
『んー?満足してくれた?』
「俺、お前の特別になりたいのかもしんね」
『何それ』
「好きとか愛してるとかじゃなくてただお前の特別な存在になりてぇ。俺の中のなまえがもう特別だから」
『何言ってるのブン太』
「何だよ。普通のことだろい?」
『そうじゃなくて。とっくにブン太は私の中で特別なんだよ。それこそ中2の時に好きになった時から。それから色々あって今こうやってブン太と付き合えて本当に幸せなんだよ私』


『こんなに想ってるのはブン太だけだよ』


なんだよその言葉。反則だろ。
堪らずなまえを強く抱きしめた。
『とっくにブン太は私の中で特別なんだよ』って言葉が頭に響く。


「俺もお前しか見ないから。お前じゃないと駄目だから」
『私も一緒だよ』
「ワガママ言ってごめんな」
『私もブン太の気持ち聞けたから嬉しかったよ』
「んじゃ寝るか」
『本当にここでお弁当作っていいの?』
「おお。ちゃんと許可貰ったから大丈夫」
『分かった。じゃあおやすみブン太』
「おやすみなまえ」


なまえの頬にキスをして寝ることにした。
今日はほんと色々ありがとな。


七海様リクエスト。
丸井ブン太。
失恋ショコラティエ6月3日深夜のお話。
七海様が失恋ショコラティエを好きだと言ってくれたのでこういう話にしちゃいました。
ブン太で書けて幸せだぁ(≧∇≦)
リクエストありがとうございました!
2018/08/01
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