17・君よりも君のことを知ってるよ。僕はずっと君しか見ていなかったんだ。
『クロークロやーい!』
「嫌だね。お前の色恋沙汰はもう聞き飽きた」
『そんなこと言わないでよう』
「ほら、あそこに暇そうにゲームしてる研磨がいるぞ」
「ゲームしてるから暇じゃないし」
『研磨まで酷い』


どうやら俺の想い人はまたもや彼氏と上手くいってないらしい。
練習の合間に幼馴染みの黒尾と研磨に泣き付いている。
と言っても二人がみょうじの話を真剣に聞いてやることは殆どない。
聞いた所で改善しないからだ。
そろそろ俺の番だろな。


『やっくーんークロと研磨がひーどーいー』
「ほら、そんな泣くなよ。俺が聞いてやるから」


今にも泣き出しそうな顔をしながらみょうじが俺に抱きついてきた。
最初は戸惑ったけどみょうじがスキンシップ過剰なのは昔かららしく今はもう慣れたものだ。
その背中をよしよしと撫でてやる。


『二人とも私の話を聞いてくれないんだよ』
「んで今度は彼氏と何を喧嘩したんだよ」
『体調悪いって保健室に行ったから部活前に心配で会いに行ったら知らない女の子とチューしてたんだって!酷いよね!』


スンスンと鼻を鳴らしながらみょうじは行った。
今の彼氏は確か後輩だっけな?
サッカー部だっけ?彼女がコロコロ変わる女好きだから止めとけって研磨に言われてたはずだ。


「んで、どうしたんだよ」
『呆然としてたらこういうことだからごめんって言われた。ひーどーいー』
「研磨にも止めとけって言われてただろ?」
『今度こそ大丈夫だって私の第六感がビビッときたんだもん!』
「お前の第六感いつもあてにならないだろ?」
『やっくんまでそんなこと言わないでよう』


ついにみょうじは本格的に泣き出したらしい。
これもいつものことだ。
仕方無いので抱きつく腕をほどいてタオルで涙を拭いてやった。


「やっくんーうちのこ泣かさないでもらえますー?」
「俺が泣かしたんじゃねえし」
『クロのせいだよ!』
「なまえちゃんは男の見る目ってのがちっとも良くなりませんね」
「ダメンズウォーカーだもんね」
『渡り歩いてないし!』
「や、渡り歩いてるだろ」
「うちのここんなに可愛いのになぁ研磨」
「そうだね」
『研磨!もっと心込めて言って!』
「……言ってるよ?」


黒尾も研磨も俺の方に意味ありげな視線飛ばしてくんなよな。
お前らの言いたいことは嫌って程分かってるよ!


「なまえはさ、もっと相手のことちゃんと見ようよ」
『見てるよ』
「見てないでしょ。大体いつも外見から惚れるよね」
『恋愛なんてきっかけは外見からでしょ?』
「や、それだけじゃないでしょ」
「そうだよ」
『えぇ!?』
「なまえがそうだから相手もなまえの外見しか見てくれないんだよ」
「そうなるね」
『あー』
「だから毎回変な男に引っ掛かってるんでしょ」
「一番ヤバかったのは大学生な」
「あーあったな。それ」
「自称大学生ね」
「如何わしい店で働かせようとしたやつな」
『もー!煩いなぁ』


あれはかなり三人で焦ったのを覚えている。
なまえはなまえで彼氏のためにならって働く気でいたのがヤバかった。
普通の男なら好きな女を絶対にそんな店では働かせないっていくら説得しても聞かなかったから四人でその自称大学生を探偵ごっこで追い掛けたこともあったな。
結局違う女と同棲してたからなまえは別れることを決意したんだっけ。


『でもさ、相手だって私のこと外見で判断するしかないじゃん』
「そんなことないだろ」
「そうだよ」
「俺だってお前のこと知ってんぞ」
『やっくん?』
「多分お前以上に俺のが良いとこ沢山知ってんぞ。俺はお前しか見てなかったしな」


黒尾達が来た辺りから泣き止んでいたけれど今度は二人にあれこれ言われてしょんぼりしてたので元気づけたくて言った一言だった。
俺の言葉にみょうじは笑ってくれる予定だったのにみょうじどころか黒尾も研磨もフリーズしている。


「あ、俺ちょっと監督に話すことあったわ」
「俺もリエーフにゲーム貸すんだった」
『…………』


黒尾の言うことは分かるけど研磨は何かそれおかしくねえ?そんなの帰りでいいだろ?
んで何でみょうじは黙ってるんだよ。


「みょうじ?急にどうしたんだ?」
『なっ何も!無いよ!』
「顔赤くない?急にどうしたんだよ」
『べべべ別に!何にもないよ!大丈夫!』
「ならいいけど。あんま落ち込むなよ。ちゃんとお前のこと中身から好きなやつもいるだろうからさ」
『うん、ありがと』
「さ、やることやってこいよ」
『分かった』


明らかに急に様子がおかしくなったけどまぁ泣いてたり落ち込んでる風ではないからとりあえずはいいか。
俺はちゃんとお前の良いとこ知ってるんだからな。


ここから一週間何故かみょうじとはギクシャクした。
俺は別に普通だけど主にみょうじがだ。
いつものスキンシップも減った。
何なら告白されたのに断ったってのも聞いた。
アイツどうしたんだ?って思ってたら研磨が教えてくれた。


「夜久君のこないだの一言は告白みたいだったよ」と。


言われて思い出した。
確かにこないだ俺がみょうじに告げた一言は告白に聞こえてもおかしくない。
俺はそんなつもり全くなかったけど。
や、好きは好きだけど告白するつもりはなかったんだ。
アイツの恋愛対象に自分が入ってないのわかってたしな。


それからギクシャクしたままさらに一週間がたった。
そしたら急にみょうじから告白された。
何を血迷ったのか泣きながらだ。
みょうじが言うには俺のことを恋愛対象として考えてなくて最初は驚いてどう接していいか分からなくなった。
その間に前ならカッコいいなと思ってるであろう人に告白されたけど全然ときめかなかった。
そんなことより俺とギクシャクしたままなのが嫌だなって思った。
それを黒尾と研磨に相談してみた結果俺と付き合ってみればと言われたらしい。


「で、何で泣いてんだよ」
『クロと研磨がやっくんはずっと私のこと好きだったって言うから』
「あーまぁな」
『私何にも知らずにいつも夜久に相談してたもん』
「気にすんなって別にいいから」
『私夜久を好きになるから!だから付き合って!』
「順番おかしくね?や、いいんだけどさ」
『クロがそうしろって。夜久のこと大好きになるから大丈夫だって』
「わ、いきなりハードル高いなそれ」
『研磨も大丈夫って言ったから』
「それは嬉しいかも」
『だから宜しくお願いします』
「こちらこそ」


これまた部活の休憩中の出来事だったんだけどな。
毎回唐突過ぎるだろ。
まぁ素直なのもコイツの良い所だな。
俺は絶対にみょうじを泣かせたりしない。
これから宜しくな。


ひかり様リクエスト。
夜久衛輔。
だめんずばかり好きになって遊ばれちゃう主人公ちゃんを見て、下心なくさらっと言えちゃう夜久くんでお願いしますとのことだったんですがこんな感じで良かったですかね?
初めての夜久さんリクエストでかなり舞い上がってしまいました(笑)
ひかり様いつもありがとうございます☆
2018/05/09
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