12・太陽が君を輝かすために強く照るなら、僕は君を守るために強くなる。
『光太郎!かーえろ!』
「なまえ!何してんだこんな時間まで」
『委員会の仕事があったの』


ついさっきまで自主練に夢中だったのにみょうじさんを見付けてさっさと木兎さんは練習を終わらせた。
相変わらず仲良しですね。


「お疲れ様です」
『赤葦君もお疲れ様。今日も光太郎のお世話大変だったでしょ?』
「なまえー俺があかぁーしのお世話してやってんだぞ!俺が先輩なんだからなー」
『はいはい。そうだね光太郎が主将だもんねー』
「大したことはしてないですよ。うちは木兎さんあってのチームですし」
「ほらな!」
『光太郎が凄いのは知ってるってば!でも赤葦君居ないと良いスパイク打てないのも事実でしょ?』
「確かに!」


みょうじさんは木兎さんの幼馴染みで俺と同い年だ。
どういう関係か直接聞いたことは無いけれどみょうじさんが年上の木兎さんを『光太郎』って呼んでいるからにしてきっと幼馴染み以上の関係なんだろう。
木兎さんの横にいるみょうじさんはいつだって優しくて穏やかで幸せそうに見えた。
みょうじさんが幸せなら俺はそれでいいと思ってたんだ。


ある日の午後、部室から体育館へ向かってる時のことだった。
委員会でいつもより少し遅れたけれどまだ部活は始まっていない時間帯だ。
曲り角で誰かとぶつかった。


『ごっ、ごめんなさい!』
「みょうじさん?」
『あかぁっし君!?私前を見てなくて!本当にごめんなさい!』
「あ、」


俺が何かを口にする前に彼女は足早にその場を立ち去っていった。
一瞬しか見えなかったけど泣いていたような気がする。
みょうじさんのあんな表情今まで見たことなくて心配になった。
部活の時間が迫っていて追い掛けることが出来ないのが残念だ。


「あかぁーし!遅いぞ!」
「まだ始まる時間じゃないですよ」
「始まってからじゃ紹介出来ないだろ!」
「誰をですか」
「彼女だって彼女!ギャラリーのとこにいる二人組の右側が彼女な!」
「………は」
「コイツが赤葦なー!いつも話してるヤツ!」


頭が真白になった。
何から木兎さんに聞いていいのか分からない。
ちょっと混乱している。
彼女はみょうじさんじゃないのか?
みょうじさんとはさっき外でぶつかったしギャラリーにいるのは確実にみょうじさんじゃない。
と言うことはみょうじさんもきっと同じことを木兎さんにされたんだろう。
そうか、木兎さんと付き合ってなかったのか。


「木兎さん」
「どうした?」
「みょうじさんと付き合ってたんじゃないんですか?」
「なまえ?アイツは俺の可愛い妹だなー!」
「では恋愛感情はないんですね」
「おう!」


一応確認してみたら即答で返事をくれた。
清々しい程の笑顔付きだ。
「何でそんなこと聞くんだ?」って言われたけどその質問は無視して練習を始めることにした。
木兎さんと付き合っていないのなら木兎さんに遠慮する義理はないだろう。


木兎さんに彼女が出来てみょうじさんは体育館へと顔を見せなくなった。
みょうじさんにとって木兎さんは幼馴染み以上の存在なんだろう。
その木兎さんに彼女が出来たってのはみょうじさんにとって辛い出来事なんだと思う。
ただみょうじさんとの接点が減って俺は少しだけ落ち込んだ。


二週間くらいたっただろうか?
練習終わりにみょうじさんが久しぶりに顔を覗かせたのだ。
今日は木兎さんより俺が先に気が付いた。


「みょうじさん?久しぶりだね」
『赤葦君今日も部活お疲れ様。そんな久しぶりかな?』
「最近顔を見てなかった気がするけどさ」
『学校に残ることがあんまりなかったから』
「おー!なまえー!どうした?」
『今日は先生の仕事を手伝ってて遅くなったの』
「んじゃ一緒に帰るか!」
『うん』


二週間ぶりに見たみょうじさんは俺の知ってるいつもの穏やかで幸せそうなみょうじさんだった。
二週間前の泣き顔は夢でも見たのだろうか?
流れで俺も一緒に帰ることになり三人で駅までの道を歩く。
木兎さんの惚気話を穏やかに聞いている彼女はどこからどう見ても辛そうには見えなかった。
こないだは泣いていたのにだ。


「あっ!光太郎ー!今帰りなのー?」
「おー!お前は何やってんの?」
「友達と遊んでたの!帰りなら送ってってよ!」
「や、今日は」
『光太郎、大丈夫だよ!私は帰れるから彼女さん送ってあげてよ』
「や、でもなぁ。電灯が切れてて最近道が暗いだろ?」
『大丈夫だよ』
「木兎さん、心配なら俺がみょうじさん送ってきますよ」
「いいのか赤葦?」
『そんな悪いよ赤葦君』
「木兎さんの最寄駅はいつも通過してるから大丈夫だよ」
「んじゃ赤葦頼むな!」
「ありがとう光太郎!赤葦と幼馴染みちゃんもまたね!」


木兎さんの彼女のおかげでみょうじさんと二人で帰る口実が出来た。
二人で木兎さん達を見送る。チラッと隣の様子を伺うとそこには寂しそうな横顔があった。
木兎さんの隣にいる時とは大違いだな。


「帰りますか」
『あ、うん。ごめんね赤葦君』
「俺が送りたかったんだよ」
「光太郎のためにありがとね」


木兎さんのためにこんなことはしない。
木兎さんの幼馴染みがみょうじさんじゃなかったら木兎さんの幼馴染みを好きじゃなかったら今頃三人を置いてさっさと帰っていただろう。


「1つ聞いてもいい?」
『うん、何かな?』
「どうして木兎さんの前ではいつも通りなのかなと思って」
『あぁ、そうか。赤葦君には分かっちゃうよね』
「いきなりごめん」
『大丈夫だよ。光太郎の前だけってのが甘かったよね』
「無理してるようには見えなかったんだけど」
『無理はしてないから』
「どうして?」
『何が?』
「そうやって考えれるのが凄いなって思った」


せっかく二人きりになれたのだから俺は気になったことをみょうじさんへとぶつけてみた。
困らせるかなと少しだけ躊躇したけれどみょうじさんはいつも通り穏やかなままだ。


『この二週間でね色々考えたの』
「うん」
『嫌な自分も沢山いたよ。何で?どうして?って何回も考えたし。でもね、一番は光太郎に会えないのが辛かったんだよ。だからそこだけを大事にしようって。光太郎と一緒にいる時は光太郎のことだけ考えようって思ったの。嫌なことは全部しまってさ。ちゃんと出来てたかな?』
「そうだね。ちゃんと出来てたよ」
『それなら良かった』


そう言ってみょうじさんは嬉しそうに微笑んだ。
彼女がこんな風に考えるのは木兎さんのためだけなんだろう。
それがとても羨ましい。
みょうじさんにこれだけ想われているのに木兎さんには彼女がいて俺はそんなみょうじさんが好きで。
木兎さんも嫌いになんて絶対になれなくて。


「みょうじさん」
『はい』
「今から少し変なこと言うかもしれないけど聞いてくれる?」
『私で良ければ』
「俺はきっと木兎さんのことを好きなみょうじさんを好きになったんだと思う」
『へ?』
「木兎さんの隣にいるみょうじさんはいつだって穏やかで幸せそうで。それならいいやって思ってたんだ」
『赤葦君?』
「最初は二人が付き合ってると思ってたから。でも実際はそうじゃなくて木兎さんの隣にいるみょうじさんはいつも通り幸せそうだけど木兎さんが隣に居ないみょうじさんはそうじゃなくて」
『ごめんね』
「謝らなくていいよ。俺の勝手な気持ちだから。だから木兎さんが隣に居ない時だけでも俺のこと見てくれないかなと思って」
『赤葦君?何を言ってるの?』
「木兎さんのこと好きなままでいいから俺と付き合ってほしい」


みょうじさんが隣で戸惑っているのが分かる。
自分でもおかしなことを言ってるとは思うけどそれでもみょうじさんに俺の隣に居てほしくなったんだ。
木兎さんのことが好きだとしても。
それごとひっくるめて俺はみょうじさんが好きだから。


『そんなこと』
「出来ないってみょうじさんは言うだろうけどお試しでもいいから」
『どうして?』
「みょうじさんのことが好きだから」
『本当にいいの?』
「いいよ」
『私、もしかしたら赤葦君が思ってたようなこじゃないかもよ?』
「それごと全部ひっくるめて好きになれるよ」
『自信満々だなぁ』
「そう決めたから」


俺の言葉にみょうじさんは絆されたみたいだ。
最後には柔らかく微笑んでくれた。
付き合うきっかけはこれでもいい。
そのうち木兎さんじゃなくて俺を見てくれたらいい。
そうなってもらうって決めたから。
木兎さんを好きなみょうじさんごとひっくるめて大事にしよう。
俺が守っていこうと心に決めた。


マリ様リクエスト。
赤葦京治。
太陽を木兎に当てはめてからの赤葦で高校生設定。ハッピーエンド希望。とのリクエストだったんですがなかなか難しかった!なんとかまとめれたけどぐちゃぐちゃしちゃったかも。
でも考えるのは楽しかったです!
リクエストありがとうございました!
2018/04/17
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