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無事に四泊五日の修学旅行を終えて東京へと戻る。
俺の代わりになって木葉さん死んでないといいけど。
後輩達の土産もちゃんと買ってきた。
ちなみにうちの部活は修学旅行のお土産は後輩だけに買えばいいって伝統がある。
いつからか知らないけど負担を減らすために作られたらしい。
それでも木兎さんにお土産をねだられたので一応は用意した。
無いって別った時にしょぼくれられても困るからだ。木兎さんだって去年先輩達にお土産なんて買ってこなかったのにだ。
相変わらず自由人である。


「赤葦久しぶりー!」
「たった五日ですよ」
「五日は久しぶりだよ〜」
「木葉さんは無事ですか?」
「んーだいぶお疲れかもね」
「でも華ちゃんがちょいちょい手伝ったからね!」
「華さんですか?」
「そうそう、木兎にしつこくされて仕方無くなんだろうけどスパイク練手伝ったんだよ〜」


修学旅行は月曜から金曜日だったので今日は土曜日だ。
いつもの時間に登校したら部室の前に雀田さんと白福さんが居た。
やっぱり木葉さんが俺の代わりに自主練の餌食になったんだなと思ったけど続く言葉に耳を疑った。
しつこくされればしつこくされただけ華さんは木兎さんからの自主練のお願いを断ると思ってたのだ。
何か心境の変化でもあったのだろうか?


「あ、これお土産です」
「いいの〜?」
「じゃがポックルね」
「木兎さんに頼まれたので一応買ってきました」
「赤葦は本当に良いこだね〜」
「さすが副主将だね!」


これで誤魔化せたらいいんだけれど。
無理だったら次のお土産を木兎さんだけにあげよう。
部室に行って着替えながら後輩達へとお土産を配っていく。


「あかぁーし!やっと帰ってきたな!」
「五日間居なくてすみません」
「や!気にすんなよ!木葉と華に付き合ってもらったから問題無いからな!」
「それならば良かったです」
「土産は!」
「じゃがポックル買ってきましたよ」
「……」


何ですかその明らかに嫌そうな顔は。
何も言葉にならないってことはかなり食べ物だったことが嫌だったらしい。
仕方無い、次の作戦だ。


「あ、木兎さんにはこっちです」
「なんだこれ?」
「マリモですよ」
「へぇ!生きてんのかコイツ?」
「どうなんですかね?」
「ありがとな赤葦!」
「ちゃんと育ててくださいね」
「任せとけ!」


まぁマリモは植物なんですけどね。
機嫌が直ってくれたのならいいか。
華さんへのお土産を持って体育館へと向かう。
旅行前に大人げなく華さんのことを苦手だと言ってしまったので避けられるような気がしなくもないけれど。


「華さん」
『……はい』
「これお土産です」
『え』
「うちの部活は後輩へのお土産は必須なんですよ」
『あぁ。ありがとうございます』
「木兎さんの相手もしてくれたみたいでありがとうございます」
『別に。たまたまです』


避けられることは無かったけど俺が話しかけても楽しくはなさそうだ。
木葉さんやマネージャー達とは比較的仲良くなれてるように見えるんだけどな。
まぁ俺が苦手だと伝えたことが原因なんだろう。
自主練の話を聞きたかったけど華さんはそれ以上俺と話したくなさそうだったので木兎さんに聞いてみることにした。
あの人の説明で理解出来るか心配だけど。


「え、華なー凄かったんだぞ!」
「お前みたいだったぞ」
「ほぼほぼ嫌がってたけどな」
「何回も今日が最後ですって木兎さんと約束してましたもんね」
「それを木葉が無理矢理やらせたんだろ」
「俺じゃなくて木兎な!」
「何でか木葉より赤葦っぽくて打ちやすかったんだよなー」
「華さんてバレー経験者なんですか?」
「や、知らないっす。木葉さんは?」
「俺も知らねえ」


木兎さんが打ちやすいって言うのならそれは本当なんだろう。しかも木葉さんより打ちやすいとは…。
経験者じゃないと説明がつかないと思う。
と言うか経験者であってほしいってのが本音。
初心者だったとしたら嫌すぎる。


「華さん」
『何ですか?』
「今日の木兎さんの自主練」
『嫌です』
「最後に一回だけ」
『赤葦さんが帰ってくるまでの約束でした』
「じゃあそれはしなくていいけど俺の質問に答えてくれる?」
『それくらいならいいですよ』
「バレー経験者だよね?」
『…………』


俺の質問に華さんは俯いてしまった。
無言は肯定の証って言うんだけどね。
その反応で俺の聞きたいことは充分に理解できた。
華さんはバレー経験者なんだろう。


「じゃあ俺木兎さんの自主練付き合うから」
『お疲れ様でした』
「お疲れ様」


結局自分の口で肯定はしなかったな。
華さんの苦手なところの1つだ。
言わなくちゃ伝わらないことって沢山あると思う。
けれど華さんはそれをしない。
あくまでも察してほしいってのが態度に出てるんだ。
俺は察することが出来るけどそれじゃそこら辺の犬や猫みたいだ。
言葉があるんだから言いたいことはちゃんと俺達が聞く前に言ってほしい。
一人で自分は不幸だって顔をするのは止めてほしい。
こうやって伝えたら彼女はいったいどんな顔をするんだろうか。


俺と華さんの信頼関係じゃ言えるわけないな。
ちゃんと先輩達がいる間に華さんが大事なことに気付けますように。


北海道から帰ってきたよ!おかえり赤葦!
ただただ温かいのが3年で逆に冷たいのが赤葦。
2018/05/27

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