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「ねぇ木葉〜」
「どうしたんだよ白福」
「華ちゃんの雰囲気ちょっと変わった?」
「どうだろな?」
「何かね時々表情が柔らかくなる気がするんだよね〜」
「そうか?」
「そうだよ!」


俺にはあんまし分からないけどな。
でも一番長い時間一緒にいるのは白福達だからもしかしら本当にそうなのかもしれない。
そういやこないだ木兎も「華が笑った!」って言ってたよなー。
俺が会った時には既にいつもの不機嫌顔だったけど。
コイツらや木兎の頑張りで華も少しは変わってきてんのかもな。


「あ、そうそう!今度練習試合あるから!」
「どこと?」
「井闥山が来るってー」
「げ。インターハイ前なのによく練習試合組めたな」
「向こうも練習試合相手欲しかったみたいだよ」
「あー、な。木兎のテンション上がりそうだよなぁ」
「既にハイテンションだったよ〜」


井闥山と練習試合とか監督も思いきったことするよなぁ。
普通の試合だって井闥山とだと木兎のテンションは上がりっぱなしなのにまさかの練習試合かよ。
木兎の鬼絡みに佐久早の嫌そうな顔が目に浮かぶ。
その癖バレーは木兎以上に上手いからな。ま、今年くらいは勝たねぇとな。


「お前ほんとに夏祭りと花火付き合うのか?」
『あー』
「木兎が絶対みんなで行くって計画立ててたぞ」
『気が向いたらって言っただけですけど』
「普段のお前なら即答で断っただろ」
『そうですね』
「何かあったのか?」
『いえ。特には何も』
「ま、気が向いたらじゃなくてせっかくだから付き合えよ。俺達高校最後の夏休みだからな」
『…わかりました』


今なんつった!?俺の予測では『考えておきます』ってはぐらかされると思ってたのに華の口から出てきたのは了承の言葉だった。
一瞬突っ込むか迷ったけど珍しく出た前向きの言葉に俺は何も言わないことにした。
訂正されても困るからな。


「練習試合もあるんだとよ」
『雀田先輩から聞きました』
「ん、ならいいわ」
『強いとことですか?』
「インターハイの優勝候補だからなぁ」
『じゃあ強いとこですね』
「ま、木兎に頑張ってもらうだけだ」
『そうですね。インターハイかぁ』


華は俺の隣で何かを懐かしむように目を細めた。
あぁアイツらの言ってたのはこれか。
確かにいつもとは違って表情は穏やかだ。
お前はさ、そんな顔も出来るのになんで普段は顰めっ面ばっかなんだよ。
今の表情のが絶対いいと思うぞ。
言ったらまた表情が険しくなるだろうから止めておいた。


「インターハイちゃんと連れてってやるからな」
『え?』
「まぁ木兎次第なとこあるけどさ」
『じゃあ期待しておきます』
「とりあえず井闥山をなんとかしなきゃなんねぇけどなー」
『いたちやま』
「そ、井闥山な。今度練習試合するとこな」
『はい』


その日、華はずっと何かを考え込んでるようだった。
俺なんか不味いこと言ったか?
別に何も言ってないよな?な?
木兎達に話し掛けられても上の空だったし。


「なぁ、木葉ー」
「どうしたんだよ」
「俺また華に嫌われたかもしんない」


またかよ!?
部活は終わってるけどしょぼくれるの早すぎじゃないか木兎!


「どうしてそう思ったんだ?」
「今日話し掛けても返事がイマイチだったんだよー。俺なんかしたかな?」


スマン木兎。多分それは俺のせいだと思う。
ただ面倒なことになりそうだからそのことは言わないでおいた。
赤葦に怒られかねないし。


「お前だけにじゃなくてみんなにそんな感じだったろ?気にすんなって」
「本当に?」
「それに別に不機嫌顔じゃなかっただろ?華にも悩み事の1つや2つあるかもしんねーし」
「華悩んでんのか?」
「や、それは分かんないけど」
「んじゃ先輩が聞いてやらないとだな!」


華、なんか話が変な方向に進んでるけどごめんな。
木兎がまた構いにいくだろうけどちゃんと相手してやってくれよ?


「雀田ー!華はー?」
「今日はもう華ちゃん帰ったよ」
「マジか!?」
「また明日話聞いてやれよ。な?」
「じゃあそうする!その代わり木葉スパイク練手伝えよ!」
「は?赤葦は?」
「監督とコーチと何か話があるって言ってた!」


結局俺にもトバっちりがきた。
つーかさ、お前が主将なんだからその話って参加しなくてもいいのか?
あぁでも木兎抜きで監督達が打ち合わせすんのもいつものことか。
ま、やる気がいいのは良いことだし赤葦が戻ってくるまで付き合ってやるかな。


結局小見も捕まってスパイクとレシーブ練になった。
赤葦が戻ってきたと思ったら俺にはブロック練させる始末だ。
ま、井闥山との練習試合があるから気合い入ってんだろな。
明日は絶対に付き合わないからな木兎。
それか鷲尾と猿杙も巻き込むことにしよう。


井闥山が練習試合に来ますよ( ・∀・)ノ
少しずつ表情が和らいでる華でした。
前向きになれるって良いことですね。
2018/06/29

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