そして絵羽は、フッと不敵な笑みを浮かべた。

「お気づかいありがとう。…そして余計なお世話よ。護身術なら心得てるわ。付き添いも結構よぅ。送り狼なんて嫌だもの」


いつもの毒々しい嫌みに、夏妃は顔を歪める。
戦人は絵羽の発言に、やはりこの部屋の中に犯人がいると思っているのだと悟った。


「足癖の悪いやつですまんな、夏妃さん。絵羽は空手・テコンドー…何でもござれやさかい、わしらのことは心配無用やで」


秀吉は苦笑いを浮かべつつ、そうフォローした。
絵羽は未だにソファーに座り動こうとしない譲治に向かって、「行くわよ」と声を掛ける。
けれど、返ってきた言葉は絵羽の想像を裏切るものだった。


「僕はここでみんなといるよ。この部屋を出ることは、親族の誰かを疑うのと同じことだよ。僕は犯人が親族の誰かだなんて信じない」

「譲治…!」


絵羽の少し非難めいた声が混ざった叫びを、秀吉が手で制した。


「…譲治ももう一人前の男や。譲治には譲治の仁義がある…、好きにさせたれ…」

「ありがとう、父さん…」


口元を緩ませ、そう譲治は父親に礼を述べた。
仕方なく納得した絵羽は、ドアノブに手を掛ける。
そして、最後にこう言葉を残して秀吉と部屋から出て行った。


「あなたたちが身内を信じるのは勝手よ?…でもね、レシートの話だけは本当よ?これがどういう意味を持つか…もう一度よく考えてみてね…?」


────と。
それはまるで、悪魔の囁きのように亜弥には感じた。

それから、あっという間時間は過ぎて行き。
時計を見れば、もうすぐ4時になるところだった。

戦人は視線を感じ、その方向へと顔を向ける。
そこにはただただこちらをじっと見つめる真里亞の姿があった。
戦人は疲れた表情をして、目を真里亞から床へと下ろした。


「…今なら信じるぜ、真里亞。手紙も殺人も全て、ベアトリーチェの仕業だ。じゃなきゃ俺たち18人は、いつまでも互いを疑い合わなくちゃならねぇ…。これなら19人目の存在を信じる方がマシさ…」


そんな辛そうな、悲しそうな声が亜弥の耳に届いてきて。
思わず、戦人の方へと顔を向けた。
亜弥の視線には気がつかず、戦人は言葉を続ける。


「祖父様の失踪だってそうだ…。扉も窓も開けずに、祖父様を外へ連れ出すなんてベアトリーチェならお茶の子さいさいなんだろ…?」

「…そうだよ。魔女の前に扉の鍵なんて、何の役にも立たないんだよ」


そう言って、真里亞は少し得意げに魔女について語り出す。
その姿は、やはり普段の真里亞からは想像もできないくらい黒く不気味に歪んでいるように亜弥には感じた。


「…頼むから…もしまだ事件を起こす気なら、絶対に人間には無理なことをして…俺に魔女の存在を信じさせてくれよ…」

「きひひひ……いいよ。会ったら伝えておくよ」


そんな頼みを聞いてくれるのだろうかと心配したが、どうやらそれは無用だったようだ。
本当に魔女は存在するのだろうか。
いない場合、真里亞は一体誰に戦人の頼みを伝えるのだろうか。
そして無事に明日が来て、警察が全てを明らかにしてくれるのか。

そんなことを考えながら、亜弥は時間が経つのをじっと待っていた。



to be continue..


ひ、久しぶり過ぎる更新でごめんなさい!((汗
話の内容は半年前に決めていたんですけど、なかなか手をつけられずにいました´`;
前半シーンは、亜弥が口を挟める場所がないのでこんな感じにしました。
新約の夜を読んでくださった方は、今回の話が例の話のもしも話だということが分かる…はずです^^*
それにしても、漫画沿いは疲れる…(笑)

20101227



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