日曜日、それはとても特別な日。 授業がなく、学校に行かなくてもいいからだ。 そんな日、いつもは静まりかえっている屋敷内に、楽しげな声が響く。
その声の主はもちろん、
「嘉音くんっ」
「…何でしょう?」
亜弥である。
仕事がオフのため部屋でくつろいでいると、ニコニコ笑顔な亜弥がやってきた。 そんな彼女に、嘉音は無愛想な表情と返事を向けた。
「かくまって!」
「は?」
亜弥はそう言うと、嘉音の返事も待たずに部屋の隅に隠れた。
「あの、」
何かあったんですか?
そう質問しようとしたとき、突然ドアが開いた。
「亜弥!?」
「朱志香…様」
「あ、嘉音くん。なぁ、亜弥見なかった?」
「は、い」
いきなり部屋に入ってきた朱志香に驚きつつも、そう返事を返す。
「そっか。じゃあ、もし亜弥を見かけたら知らせて!」
「はあ…」
何とも言えない返事をすると、朱志香は慌ただしく部屋から出て行った。
それを見届けると隠れていた所から出て、亜弥はにんまりと笑った。
「ふう、行ったみたいだね」
「そうみたいですね」
「ありがとうね、嘉音くん」
「いえ、僕は何もしていませんから…。それより、何かあったんですか?」
嘉音から何かを聞いてきたことに嬉しく思ったのか、亜弥は笑顔になった。
「かくれんぼしてるの!」
その答えに嘉音はぽかんとなった。
「あ、もしかして嘉音くんもやりたい?」
「いいえ」
「えー…」
「僕は仕事がありますので」
嘘だ、本当は今日は仕事はない。 別に、一緒に遊びたくないわけでもない。 自分は家具だから…。
仲良くなりたいけれど、僕にはそんな資格なんて、ない。
嘉音がそんなことを思っているとはつゆ知らず、素っ気ない返事に、亜弥は不満げに頬を膨らませる。
そんなとき、バンっと無遠慮に扉が開かれた。
「あ、亜弥みっけ!」
「わわっ朱志香お姉ちゃん!?」
「ここにいたんだな。ったく、屋敷広すぎだぜ」
苦笑いをする朱志香を前に、亜弥はがっくりと肩を落とした。
そんな彼女らを見て、嘉音は二人でかくれんぼをして楽しいのだろうかと疑問に思っていた。
亜弥はきょろきょろと辺りを見回すと朱志香を見る。
「紗音は?」
「まだだぜ。紗音の奴、隠れるの上手いからなぁ」
「…姉さんもやってるんですか?」
二人の会話の中に、想像もしていなかった人物の名前が上がり、嘉音は少し驚く。
「そうだよ。一緒にやろうって誘ったんだ!」
「あ、嘉音くんもやらない?」
「いえ、僕は…」
「じゃあまずは紗音を探さなきゃね」
「三人で探しに行こうぜ。その方が効率がいいし」
「いえ、だから…」
「よーしっ見つけるぞ!」
嘉音の言葉を無視し、どんどん話を進めていく二人。
はあ、と嘉音はため息をついた。 どうやら諦めたようだ。
13にもなってかくれんぼ…か。
そんなことを嘉音が思っているとは欠片も思わず、二人は駆け出していく。 がっしりと嘉音の腕を掴んだまま。
「紗音みっけ!」
「上手く隠れたつもりだったんですが…」
「嘉音くんが、紗音が隠れるならここだって」
「え?あれ、嘉音くん」
「……」
「よーし、じゃあじゃんけんしよっ!」
「ふふ、楽しいね。嘉音くん」
「…うん」
to be continue..
亜弥は嘉音と一緒に遊びたいんだけど、しつこく誘うと嫌がられると思って無理に誘えない。 でも朱志香と一緒になると強気になる。 嘉音は何気に押しに弱い。 そんな話でした(笑)
20090605
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