知っている、だってあのネックレスは──
「私があげたものだわ」
「なら、尚更あなたは適任ですわ」
「けど、どうしてあれを…?」
不安げに眉をひそめると、シルフィールは手を口に当ててクスリと笑った。
「アヤがとても大事にしているから。そんなにも大切なものを捕られて隠されたら、アヤだってきっとこの場からでると思いますの」
どうかしら、とシルフィールは尋ねた。 ベルンカステルはうなだれる。
そんなことをして、アヤを傷つけないかしら。 いいえ、例え傷つけてしまったとしても、前みたいに笑いかけてくれるなら。 前のアヤに戻るなら、それは素晴らしい結果にたどり着くための一つの通過点。
ベルンカステルは顔を上げ、鳥籠の扉へと近づいていく。
そっと触れたとき、何もかもが止まった気がした。 音、風景、空気、光、感覚。 五感が全て、時を止めた──
「ベルンカステル、しっかりなさいな」
「っ!」
シルフィールの声に、はっと我に返る。 危うくアヤの力に飲み込まれるところだった。
ふぅっと深呼吸をし、ゆっくりと扉を開く。 キィィと開く音さえ、しなかった。
ベルンカステルは中に入ると、ゆっくりとアヤに近づいていく。 そして後ろに回り込むと、そっとネックレスを外した。
そのとき── アヤと目が合った。
いけない!そう思い、ベルンカステルはシルフィールへとそれを投げた。 それを受け取ると、魔法でどこかに飛ばしてしまった。
「ねぇ…」
今にも消えてしまいそうな、小さな声。 けれど2人には確かに聞こえた。
久しぶりに聞いたアヤの声に、ベルンカステルは嬉しさの余りそっとアヤの肩に触れる。
「アヤ…私が分かる?」
「……どこ」
「え?」
「どこへやったのよ!?」
泣きそうな表情で、そう叫んだ。 いきなりのことでベルンカステルは驚き、その場に座り込む。 するとアヤはそんな彼女には目もくれず、扉をくぐって外へ出た。 シルフィールはにっこりと微笑する。
「気分はどう?」
「最悪よ!どうしてこんなことをするの!?」
「あなたのため、ですわ」
そう告げると、アヤにキッと睨みつけられた。
「私のことを思うなら、そっとしておいて!私の世界は、この鳥籠だけで十分なの!」
怒鳴り散らすアヤに、シルフィールはやれやれと額に手を置いた。
「駄々をこねるのはおよしなさいな。あなたは子どもではないのですよ」
「っそんなことは分かっています、でも……!」
ムキになるアヤの唇を人差し指で押さえ、にっこり微笑む。
「こんな話をしていていいの?早く探しにいかなくてはならないんじゃないかしら?」
「!!」
悔しげに一睨みすると、アヤは走り出す。
その背に一言投げかけた。
「六軒島、というところに行ってご覧なさいな。探し物が見つかるかもしれませんわ」
おかしげに、楽しげに笑う。
アヤが振り返ることはなかった。 けれど、その言葉は確かに届いていた。
「六軒島…そこに、あるのね」
ふんわりと宙を舞う。 籠に閉じこもっていた小鳥が一羽、大空へと飛び立った。
世界は再び、廻り始めた──
to be continue..
ベルン、アヤを溺愛しております^^ …というかこれベルン?って感じですね(汗) 次は嘉音が登場ですっ 何か無理あるストーリーだとかツッコまないでくださいね!笑
20090731
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