01.不変の魔女



鳥籠の中で私は泣き続けた。

お願い、この扉を開かないで。

『不変』の魔女は、全てを愛し。

全てを幸福へと導く──


けれど私は気づいてしまったの。


「変わることは、本当に幸せなことなのですか?」


その問いには、いつだって誰も答えをくれない。


だからこそ…。

私は今日も、籠の中で眠り続ける。


世界が変化を望むのなら、私は不変の時を望もう。


また一枚、真っ白の羽が舞い落ち、真っ赤なドレスに沈んでいった。



【第1話:不変の魔女】





私は、『不変』の魔女。
お師匠様─シルフィール様は、数多くの称号を持っている。
そのため『全能の魔女』と呼ばれている、私にとって憧れの方だ。
そんな方から、私は称号を継承した。


─全ての者に、不変の幸せを与える


そういう力を持っているらしい。
私は本当に嬉しく、そして誇らしかった。
魔女としての才能も力量も、私にはきちんと備わっていた。
けれど、少し抜けた性格のためか、失敗ばかり…。

いつもシルフィール様は苦笑しながら、


「亜弥ならできますわ」


とおっしゃってくださった。

その言葉は私の心の支えで。
今の私があるのは、彼女のおかげだ。

だからこそ──
私は『不変』の魔女として、精一杯幸せを願おう。
そしていつかシルフィール様のように…素晴らしい魔女になりたい。


この先が明るい未来であることに、私は何の疑いも抱いてはいなかった


狂い始めたのは、そうあの日。
人の変わっていく様を見たときだった。

私は、ある恋人たちを見守っていた。
本当に素敵な2人で、見ていてとても微笑ましいものだった。

だからこそ、彼らにもっともっと幸せが訪れますように。
永遠に変わらない愛でありますように──

そう、不変の幸福と愛を願った。




けれど──
無情にも、2人の仲は終わりを告げた。
それも最悪な形で。

彼女は泣いていた。


「どうして…」


と力無く呟きながら。

彼は冷めた瞳で涙を流す彼女を一瞥して、吐き捨てた。


「ウザいんだよ、二度と姿をあらわすな」


どうして、どうして、どうして、どうして……


人とはこんなにも変わってしまうものなのですか?
過去に確かに『幸せ』も『愛』も存在していたのに。
私は、本当に『不変』の魔女なのでしょうか?
彼らの幸福は絶望に、愛は憎しみに変わってしまいました。

変わらないものを望んだのに──


ポタリ、と涙が零れ落ちた。


変わらない幸せなど、愛など存在しないんだ。
人の心なんて容易く変わり、全てを終わらせる。

だったら私は、変わらない時を願い望もう。
そうすれば、何もかも永遠に変わらない。
こんなにも幸せなことがあるだろうか。

さぁ、ほんの少し時を戻して。
彼らの幸福だった時を、永遠のものに変えましょう。
時間を止めてしまいましょう。
ほら、そうすれば──
何も変わらないまま。


「さぁ、思い返してご覧なさい。あなたが何を失ってしまったのか」


そして、取り戻しましょう?
──全てを。


いつまでも不変のままの世界を築き、与える

私は、時を止めた。



to be continue..


えー、つまり最初は『成長していっても、幸せや愛は変わらないもの』と亜弥は思っていたのですが、実はそうではなくて。
だから、『時を止めて、幸せだった頃の時間をずっと続けよう』という考えに至ったのです。
ベアトに無限に人を殺す力があるように、亜弥には人の時を止める力があったんです。
おかげで彼らの時間は一生止まったままです(笑)
原作をやっていないので、「いやいやっこんな設定はないよ!」というのも出てくるかもですが、オリジナル設定(亜弥だけ特別な)だと思って、大目にみてやってください!

20090727



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