鳥籠の中で私は泣き続けた。
お願い、この扉を開かないで。
『不変』の魔女は、全てを愛し。
全てを幸福へと導く──
けれど私は気づいてしまったの。
「変わることは、本当に幸せなことなのですか?」
その問いには、いつだって誰も答えをくれない。
だからこそ…。
私は今日も、籠の中で眠り続ける。
世界が変化を望むのなら、私は不変の時を望もう。
また一枚、真っ白の羽が舞い落ち、真っ赤なドレスに沈んでいった。
【第1話:不変の魔女】
私は、『不変』の魔女。 お師匠様─シルフィール様は、数多くの称号を持っている。 そのため『全能の魔女』と呼ばれている、私にとって憧れの方だ。 そんな方から、私は称号を継承した。
─全ての者に、不変の幸せを与える
そういう力を持っているらしい。 私は本当に嬉しく、そして誇らしかった。 魔女としての才能も力量も、私にはきちんと備わっていた。 けれど、少し抜けた性格のためか、失敗ばかり…。
いつもシルフィール様は苦笑しながら、
「亜弥ならできますわ」
とおっしゃってくださった。
その言葉は私の心の支えで。 今の私があるのは、彼女のおかげだ。
だからこそ── 私は『不変』の魔女として、精一杯幸せを願おう。 そしていつかシルフィール様のように…素晴らしい魔女になりたい。
この先が明るい未来であることに、私は何の疑いも抱いてはいなかった
狂い始めたのは、そうあの日。 人の変わっていく様を見たときだった。
私は、ある恋人たちを見守っていた。 本当に素敵な2人で、見ていてとても微笑ましいものだった。
だからこそ、彼らにもっともっと幸せが訪れますように。 永遠に変わらない愛でありますように──
そう、不変の幸福と愛を願った。
けれど── 無情にも、2人の仲は終わりを告げた。 それも最悪な形で。
彼女は泣いていた。
「どうして…」
と力無く呟きながら。
彼は冷めた瞳で涙を流す彼女を一瞥して、吐き捨てた。
「ウザいんだよ、二度と姿をあらわすな」
どうして、どうして、どうして、どうして……
人とはこんなにも変わってしまうものなのですか? 過去に確かに『幸せ』も『愛』も存在していたのに。 私は、本当に『不変』の魔女なのでしょうか? 彼らの幸福は絶望に、愛は憎しみに変わってしまいました。
変わらないものを望んだのに──
ポタリ、と涙が零れ落ちた。
変わらない幸せなど、愛など存在しないんだ。 人の心なんて容易く変わり、全てを終わらせる。
だったら私は、変わらない時を願い望もう。 そうすれば、何もかも永遠に変わらない。 こんなにも幸せなことがあるだろうか。
さぁ、ほんの少し時を戻して。 彼らの幸福だった時を、永遠のものに変えましょう。 時間を止めてしまいましょう。 ほら、そうすれば── 何も変わらないまま。
「さぁ、思い返してご覧なさい。あなたが何を失ってしまったのか」
そして、取り戻しましょう? ──全てを。
いつまでも不変のままの世界を築き、与える
私は、時を止めた。
to be continue..
えー、つまり最初は『成長していっても、幸せや愛は変わらないもの』と亜弥は思っていたのですが、実はそうではなくて。 だから、『時を止めて、幸せだった頃の時間をずっと続けよう』という考えに至ったのです。 ベアトに無限に人を殺す力があるように、亜弥には人の時を止める力があったんです。 おかげで彼らの時間は一生止まったままです(笑) 原作をやっていないので、「いやいやっこんな設定はないよ!」というのも出てくるかもですが、オリジナル設定(亜弥だけ特別な)だと思って、大目にみてやってください!
20090727
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