カチ…カチ…と小さく音を立てて、時計の針は進んでいく。
只今の時刻は、8時50分。


亜弥たちは客間で朝食をとっていた。
終始無言で、誰もが表情を曇らせている。

ふぅっと息をつくと、亜弥は箸を置いた。
料理はまだ半分以上残っている。
あんなにも酷い事件があったためだろう、食欲がないようだ。




そして朝食後──
夏妃は使用人たちを連れて、金蔵の捜索と戸締まりの確認へ向かった。


「ほな…みんなで仲良くテレビでも観て待ってよなぁ」

「うーっ観る観る!」


秀吉の提案に、ただ一人真里亞だけが手を上げて賛成した。

朱志香と譲治は、ふさぎ込んでしまっている。
亜弥は俯いているため、表情を読み取ることができなかった。

戦人はとても落ち着いた表情で、バシッと自分の手をもう片手で殴った。


「どうしたのぅ、怖ぁい顔して」


顔を上げると、絵羽の姿が。


「留弗夫と霧江さんのこと…本当にお気の毒だわ。縁寿ちゃんが知ったら、さぞ悲しむようでしょうね…」


ゆっくりと、戦人の目の前の椅子に腰を下ろす。


そして、今回の殺人が魔女の手紙と関係があるか。
ベアトリーチェが存在するかを話し合った。

そして、絵羽は犯人は使用人ではないか──そんな風なことを口にした。


「…絵羽おばさんは、使用人が全員グルだろうって…言ってるんですか…」

「そんなはずないっ!」

「…亜弥」


いつからいたのだろう、亜弥が戦人の真横に立っていた。
泣きそうな顔をしている。


「やあねぇ、亜弥ちゃん。可能性を言っただけよ」


慌てて絵羽はそう告げる。
そして、亜弥に座るように言った。

亜弥はまだ不満そうな顔をしているが、言われた通りに戦人の隣に座った。


「それにね、黒幕がいるんじゃないかと思うの。奇しくも私たちは遺産問題の真っ最中。
兄さんたちの死で、利害が発生する人間が関わってるのは当然じゃない?」

「つまり、それって…」


この事件で、一番得をする人物。
それは──


「私よね、この殺人で一番得をするのは」


手にしていた扇子を、自分の方へ向けた。

戦人は眉間にしわを寄せた。
絵羽はにっこり微笑む。


「亜弥ちゃんと戦人くんが考えてること、当てちゃったぁ?
兄弟はみんな殺されて、お父様の遺産相続権があるのは今や私一人…右代宮家の財産は全部私のものになるの」


うふふふふ、と笑ってみせた。

(4/6)



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