一晩たっても、雨は変わらず降り続いていた。 激しさも変わっていない、むしろひどくなっている気さえする。
そんな中、屋敷に着いた亜弥たちは、絵羽の話に目を丸くしていた。
「親父たちがいない!?」
戦人が驚きつつ、そう聞き返す。 すると絵羽は困ったように眉を下げた。
「そうなのよぅ。蔵臼兄さんに留弗夫に霧江さんに楼座に郷田さん。 それから…どうも紗音ちゃんもいないって話よ」
「気分転換に海岸の方へでも、行っとるんかのう」
秀吉が絵羽の言葉に続いてそう口にした。 それを聞いた真里亞は、ぎゅっと亜弥の服の端を握りしめた。
「うー!ママ!ママがいない!!」
「真里亞、ここで私たちとテレビを観ながら待っていましょう?きっとすぐに帰ってくるわ」
絵羽がいる手前、亜弥はいい子モードになる。 絵羽は亜弥の言葉に、目を輝かせた。
「あら、なら一緒にお話ししましょうよ。亜弥ちゃんとたくさん話したいもの」
その誘いに亜弥は一瞬戸惑うが、譲治が真里亞とテレビの前に座り、こちらに軽く微笑んでくれたため、
「はいっ喜んで!」
そう返事を返し、絵羽の近くの席に座った。
しばらくの後、夏妃が部屋へ戻ってきた嘉音と源次にどうだったを問いた。 2人が首を横に振ったため、ふぅと息をはいた。
「まだ見つからないのですか」
頭痛がするのか、頭にそっと手をやる。
「どうせ島のどこかにいるのです。お腹がすけば、戻ってくるでしょう。 …私は、お客様のお茶の用意をしてきます」
「お…奥様、まだご報告が…」
嘉音が引き止めるが、夏妃は聞かずに出て行った。
「どうかしたの?」
「あ…亜弥様。 実は…薔薇庭園の倉庫の様子が…おかしいのです…」
「倉庫がどうかしたのぅ?」
今度は絵羽が尋ねる。 すると嘉音は何ともいえない表情をした。
「…その…何と説明すればいいのか……」
「嘉音くんにしては歯切れの悪い言い方ねぇ」
「…鍵を取りに戻ったところなのです。中を確認して参ります」
「どれ、わしらも行くで」
どうやら気になったらしく、秀吉はそう告げた。
亜弥は戦人のところへ歩み寄る。
「私たちはどうする?」
「そうだなぁ…」
不安げに嘉音たちの方へ視線を向ける。 そのとき、ぎゅっと真里亞が服の端を引っ張った。 いきなりのことに驚き、真里亞の方を見る。
「うー!亜弥も戦人も一緒にテレビ観る!」
不機嫌そうに眉間にしわを寄せて、そう口にした。 反論は許さない、そう言われているような気がして、亜弥と戦人は分かったと頷いた。
大人たちは、部屋から出て行った──
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