ゲストハウス内では、戦人たちがすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。
亜弥は音を立てないように気をつけながら、戦人たちに近づいていく。
どうやら驚かすつもりのようだ。
そーっとそーっと、足を忍ばせる。

そのとき、どこかに行っていたらしい真里亞が、運悪く部屋に戻ってきた。
真里亞は亜弥に気づくと、嬉しそうに駆け寄った。
亜弥は慌てて人差し指を口に付ける。


「今から戦人たちをビックリさせるの。だから、しーっだよ?」

「うー、分かった。真里亞もビックリさせる!」


真里亞は瞳をキラキラと輝かせる。
亜弥は頷くと、戦人の上に飛び乗る。
真里亞はそれを見て、同じように上に乗った。


「うわぁッ」

「おーきーろー!!」

「うーうーうー!!」

「何だ何だっ敵襲かぁ!?」


真里亞の激しいジャンプに、戦人は驚いて目を覚ました。
亜弥は、おかしそうに笑う。


「って亜弥!何で夜帰って来なかったんだよぅ!」

「だって嘉音とずっと一緒にいたんだもん」

「なっ何ぃぃぃいい!?」


驚いたらしく大声で叫ぶ。
すると譲治と朱志香が目を覚ました。


「戦人、朝っぱらから大きな声出すんじゃねーよ」

「だってよ朱志香!亜弥の奴、ずっと嘉音くんと一緒にいたらしいんだぜぇ!」

「だからってめそめそ泣くんじゃねぇ!」


きっと睨まれ、戦人は涙目のまま顔を伏せる。
そして、


「朱志香が苛めるー」


と泣き真似をした。


「まあまあ、その辺にしなよ。戦人くんも、あんまりふざけると朱志香ちゃんに殴られるよ?」

「そうそう」

「お前が言うな!!」


そう思い切り亜弥にツッコんだ。
亜弥は楽しげに笑っている。

そのとき、真里亞が思い出したようにうーうーと言い出した。


「うー!いーなーいー!!ママがいないー!うーうー!!」

「楼座おばさんがお部屋にいなかったの?」

「屋敷に行ってみようよ。楼座おばさん、そこにいるかもしれないし」


亜弥の意見に、戦人は服を着替えながら頷く。
ちなみに亜弥は先ほどから壁ばかりを見ていた。
恥ずかしがっているようだ。


「だな。親たちはもう行ってるんだろうぜ。…亜弥、もうこっち向いても大丈夫だぜ!」

「へっあ、うん」


ほんのり頬を赤らめながら、くるりと亜弥は振り返った。


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