嘉音は視線を扉から亜弥へ移した。


「ほら亜弥様もお部屋の方へ……亜弥様?」


俯いたまま顔を上げようとしない亜弥を、嘉音は不思議そうに見つめる。
微かに肩が震えているのに気づいた。


「亜弥さ…」

「嘉音のバカー!!」


視界に入ったのは、瞳に大粒の涙を溜めた亜弥の顔。
亜弥は掴んでいた嘉音の腕を思い切り振り放すと、走って部屋から出て行く。

嘉音ははっとしたように、亜弥を追いかけた。





「亜弥様…待ってください!」

「うるさいっついて来ないで!」


廊下を走る2人の距離が、少しずつ縮まっていく。
亜弥はさらに足を速めた。
嘉音はぎゅっと唇を噛み締める。
そして、


「…亜弥!!」


と、大声で叫んだ。

すると亜弥はゆっくりと立ち止まった。


「亜弥」


近づき、声をかける。
けれどこちらを見ようとしない。
嘉音は無理やり亜弥を自分の方へと向かせた。


「何、泣いてるの」

「う…うぅ…」

「ほら、泣き止んで」


そっと指で瞳から零れる涙をすくう。
そして優しく頭を撫でた。
亜弥はその行為にさらに泣き出した。


「嘉音が、家具と…か、紗音に、ひどいこ…と、言うからぁ!」


呂律が上手く回らない。
けれど必死に言葉を紡ぐ。
すると嘉音はぎゅっと亜弥を抱きしめた。


「ごめん、亜弥」

「…許さない、もん」


亜弥は嘉音の胸に顔を埋めながら、ぎゅっと抱きしめ返す。


「今日、ずっと一緒にいて」


顔を上げ、嘉音を見つめる。
そんな亜弥を見て、嘉音は少し頬赤く染めた。


「うん。でも、使用人室でだよ?」

「…嘉音と一緒にいられるのなら、どこだっていいよ」


可愛いことを言う亜弥の頬に、嘉音はそっと口づけた。




そして、0時──
ゴォーン…と館内に鐘が鳴り響いた。
幸せな時間の終わりを告げる、悲しい調べが。



to be continue..


とにかく亜弥と嘉音を中心に書きました!
2人がいちゃついてたのと同時刻に、譲治と紗音もいちゃついてました(笑)
ちなみに源次は亜弥と嘉音が帰ってきた後、退散しました\(^o^)/
本当は「戦人と遊ぶもん」とか言って、嘉音にヤキモチやかせたかっt(殴)
でもワンパターンなのでやめました。
次は第一の晩!
が、頑張りますっっ

20090715



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