嘉音と別れた後、亜弥は朱志香たちと合流した。 譲治はずっと泣き続け疲れたのだろう、眠っている真里亞をおぶっていた。 ゲストハウスに戻ろうと廊下を歩いていると、丁度前に戦人がいた。
「戦人〜!」
「亜弥!それに朱志香、譲治の兄貴に…楼座おばさん」
「戦人くん、しー!」
譲治は背負っている真里亞を、戦人に見えるよう向けた。
「真里亞ちゃん、肖像画の前で眠そうにしてたから連れてきたんだ。起こさないであげて」
真里亞の目元は、痛々しいくらい真っ赤に腫れていた。
「僕らはそろそろ、ゲストハウスに戻ろうよ。お屋敷にいると、大人の会議の邪魔になると思う」
時計は、10時半をさしている。 楼座はふぅっと息をついた。
「ごめんね、私たちの話し合いは大分遅くまでかかりそうなの。 みんなに真里亞をお願いしてもいいかしら…?」
「任せてくださいよ、楼座おばさん!真里亞のことは、俺ら4人で面倒見ますから!」
どんっと胸を叩いて、戦人は自信満々にそう言う。 亜弥たちもにこりと笑みを浮かべた。
「みんな、ありがとう…。真里亞のこと、よろしくね」
楼座は穏やかな眼差しを向けて、亜弥たちにお礼を告げた。
【第8話:幸福な時間】
ザアアアア…と激しく雨が降り注ぐ。 そんな中を、亜弥たちは傘をさして歩いていた。
譲治と紗音は、同じ傘に入っている。 そのため、胸が譲治の二の腕に当たった。 2人は顔を真っ赤に染めた。
「かー!俺が真里亞背負ってればなあ!紗音ちゃんに傘さしてもらえて!そのお乳を二の腕にぱいん、てしてもらえたのによぅ〜!」
「そ…そうしないと、譲治様が濡れてしまうと思いまして…」
ゆでたこのように真っ赤になる2人。 亜弥は微笑ましそうに、彼らを見ていた。
「なら俺は朱志香をおんぶして、紗音ちゃんに傘さしてもらうってのはどうだい?背中におっぱい!腕にもおっぱい!」
「するかよ!!」
「ねー、私は?」
「亜弥!?」
朱志香は亜弥の発言に目を丸くした。 う〜んと戦人は考え、
「亜弥には…ほら、そんなことさせられねぇよ」
「なんか上手く誤魔化そうとしてる気が…」
「ちっ違うって!やっぱほら、好きな子には…さ…」
顔を赤くさせ、ごにょごにょと口ごもる戦人に亜弥は眉をひそめた。
「何言ってるのかわかんない」
「ガーンッ!!」
「ははっざまーねぇぜ!」
肩を落として落ち込む戦人に、朱志香は腹を抱えて笑う。 その光景を見て、紗音は緩やかに微笑んだ。
「皆様方は本当に…まるでご兄弟のように、仲がよろしいですね。羨ましいです」
「仲の良さなら、うちの親父たち兄弟には負ける気はしねえなあ。けど紗音ちゃんにも、嘉音くんていう弟がいるじゃねぇかよう」
たった今まで落ち込んでいたにも関わらず、戦人はもう復活を遂げて紗音に笑顔を向けた。
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