真里亞は手紙をすらすらと読み進める。


「長年に亘りご契約に従いお仕えしてまいりましたが、本日金蔵様よりその契約の終了を宣告されました。
よって本日をもちまして、当家顧問錬金術師のお役目を終了させて頂きますことを、どうかご了承くださいませ。
さて、ここで皆様に契約の一部を説明しなければなりません。
私、ベアトリーチェは金蔵様にある条件と共に、莫大な黄金の貸与をいたしました。

その条件とは、契約終了時に黄金の全てを返還すること。
その利息として、右代宮家の全てを頂戴できるというものです」


その言葉に、一同は驚愕する。
無理もないだろう、とんでもない話なのだから。


「む…無茶苦茶や!黄金も財産も、全部返せっちゅうんか!!」


驚きのあまり声を上げる秀吉。
そんな彼をよそに、真里亞は淡々と続ける。


「これだけをお聞きならば、皆様は金蔵様のことを何と無慈悲なのかとお嘆きにもなられるでしょう。
しかし金蔵様は皆様に富と名誉を残す機会を設けるため、特別な条件を追加されました。
その条項が満たされた場合に限り、私は黄金と利子を回収する権利を永遠に失います」

「特別な条項…?何だそりゃ…」


留弗夫は眉間にしわを寄せる。


「特別条項。契約終了時にベアトリーチェは、黄金と利子を回収する権利を持つ。
ただし、隠された契約の黄金を暴いた者が現れた時、ベアトリーチェはこの権利を永遠に放棄しなければならない。

…利子の回収はこれより行いますが、もし皆様の誰かが一人でも特別条項を満たせたなら、すでに回収した分も含めて全てお返しいたします」


ガタガタっと、親たちは一斉に立ち上がる。
すごい形相だ。


「なお、回収の出始めとしてすでに、右代宮本家の家督を受け継いだことを示す"右代宮家当主の指輪"をお預かりさせて頂きました。
封印の蝋燭にてそれを、どうかご確認くださいませ」

「…ありえんっ」


バンっと、これでもかというくらい強くテーブルを叩いて蔵臼は怒鳴りだした。


「親父が指輪を手放すことも!黄金伝説もありえない!
私は当主代行として全ての財産を把握している!
黄金など存在しないッ!!」


きっぱりとそう言い切った。
すると絵羽が妖笑した。


「じゃあ蔵臼兄さんの把握してない財産こそが…ベアトリーチェの隠し黄金よねぇ…!」

「……っ」


一同は口をつむぐ。
蔵臼は悔しげに顔を歪ませた。


「黄金の隠し場所については、すでに金蔵様が私の肖像画の下に碑文にて公示されております。
条件は碑文を読むことができる者全てに公平に。黄金を暴けたなら、私は全てをお返しするでしょう」


─碑文を解いて黄金を見つけたら利子の回収を放棄して、見つけたやつに右代宮の全てを与える…。

戦人はごくりと唾を飲み込んだ。


「それではどうか今宵を、金蔵様との知恵比べにて存分にお楽しみくださいませ」


これは、序列関係なしの黄金争奪戦だ。


「今宵が知的かつ優雅な夜になるよう、心よりお祈りいたしております。
──黄金のベアトリーチェ」


(2/4)



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -