夕食後のこと。 真里亞が譲治に話し掛けた。
「譲治お兄ちゃん、これでご飯は終わり?」
「うん、おしまいだよ」
「じゃあ、お手紙読む!真里亞、お手紙読む!」
そう言って、自分の鞄をあさる。
「手紙?」
戦人が聞き返したとき、真里亞はテーブルに手紙を置いた。
片翼の模様が印された手紙を──
【第7話:魔女からの手紙】
大人たちは、その手紙を見て表情を一変させた。 朱志香はその変わりように、ほんの少したじろぐ。
「な…何で急にみんなマジになってんだ?この封筒が、どうかしたのかよ?」
「…その封筒は…金蔵さんの…! この家紋が箔押しされた封筒も…当主の指輪で刻印された封蝋も…間違いない…金蔵さんの手紙です」
南條は驚きながらも、手紙を見てそう言った。 その言葉に、親たちは次々に否定をしていく。
「憶測でものを言うのはやめて頂こう、南條先生。 親父殿から手紙を貰ったことがある者なら、それを元に偽の封筒と封蝋を作り、親父殿を語ることができる」
「兄貴に同感だぜ」
「そうよ。どれだけお父様のものに酷似していても、本物であるとは証明できないわ」
彼らの表情を見て、亜弥は悟る。 恐れているのだろう、この手紙が本物で、自分の不利になることが書かれているのでは…と。 だからこそ、口々に違うと否定しているのだ。
「…真里亞、あなたそれをどこで拾ったの?」
「うー!傘を貸してくれた時に、ベアトリーチェにもらった!」
嬉しそうに、そして得意げに真里亞は続ける。
「ご飯が終わったら、真里亞がみんなに読んで聞かせろって言われた!真里亞は魔女の…め…め、"めっせんじゃ"なの!」
ぎゅうっと手紙を両手で握りしめる。
「得体の知れない何者かが手渡した怪文書です。読むにも値しません…!」
「いいじゃないの、誰が書いたのかはともかく。中身を聞いてからの判断でも」
「そ…そうやな。中身が気になるんは事実や…読んでくれ、真里亞ちゃん」
秀吉の言葉に真里亞は頷き、スゥ…と息を吸い込んだ。 そして、手紙を読み出す。
「六軒島へようこそ、右代宮家の皆様方。私は、金蔵様にお仕えしております、当家顧問錬金術師のベアトリーチェと申します」
亜弥は首を傾げる。 そして、隣の戦人にそっと話しかける。
「錬金術師って何?」
「えーっと…錬金術に携わる研究者…か?」
「質問を質問で返さないでよ」
「わ、悪ぃ…」
頬掻きながら苦笑する。
そのとき蔵臼が、
「誰だか知らんが、くだらん戯言を…!」
と吐き捨てるように言った。
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