戦人は戸惑いながらも、口を開く。
「…ベアトリーチェってあの…この島の魔女の…かよ?」
「うー!ベアトリーチェ!」
嬉しそうに、魔女の名を口にする。
「…そんなわけないでしょう?誰が真里亞に傘を貸してくれたの?」
楼座が一同に問いかける。
「俺たちじゃねぇぜ」
さらりと留弗夫は答える。
「楼座さんが出て行った後も、兄弟でずっと仲良くおしゃべりしとったからなあ」
「それから、そのまま食堂へ来ましたから…」
秀吉がにこりと笑いながら答え、霧江がそれに続く。
「私も知らんね」
「蔵臼兄さんが源次さんとお父様を呼びに行くまで、私たちは一緒だったわよぅ。夏妃姉さん以外はね」
「私は頭痛が酷かったので、ずっと部屋で休んでいました」
絵羽の嫌味を無視し、夏妃は淡々と告げた。
「私たちは夏妃奥様の指示で、お屋敷の客室の準備をしておりましたよ」
「はい、私と熊沢さんと嘉音くんの3人で」
「私は厨房で、夕食の準備をしておりましたもので…。気が利かず、申し訳ございません」
使用人たちもどうやら違うようだ。
「私と金蔵さんは、雨の降り始めの頃から書斎でチェスをしておりましたな」
顎に親指を付け、南條は思い出すように答えた。
「僕らはずっと、ゲストハウスでテレビを見ていて…」
「真里亞はおばさんと一緒に、屋敷に行ったと思ってたぜ…」
「私も…みんなとずっと一緒にいました」
譲治、朱志香、亜弥が答え、
「もちろん俺でもないぜ。第一俺だったら傘を貸すより先に、屋根の下に連れてくぜ」
戦人もまた、自分ではないと答えた。
全員の話を聞き、楼座は当惑する。
「じゃあ源次さん…?待って、私は犯人探しをしてるわけじゃないのよ? お礼が言いたいだけなのに、どうして誰も名乗り出てくれないの…!?」
真里亞は一人、黙々と料理を口に運んでいく。
「誰?誰が真里亞に傘を貸してくれたの?」
「うー、だから言ってる!ベアトリーチェ!」
雷が光り、不気味に食堂を照らす。 戦人は、真里亞から目を離すことができない。
「ベアトリーチェが、貸してくれたの」
背筋がぞくっとするのを、亜弥は感じた。
to be continue..
嘉音を出すことができたので満足です^^ 何気に嘉音と相合い傘しちゃったよ亜弥…! 次はついにベアトからの手紙編っ できれば一巻の最後までいきたい…!!
20090705
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