外では、ザァァアと激しいくらいに雨が降りそそいでいる。
そんな中、亜弥たちはゲストハウスでくつろいでいた。
先ほど金蔵が行った儀式や、真里亞に近づく怪しい人物にも気づかずに。


『大雨洪水警報が発令された地域は、以下の通り…』


室内はテレビのニュースの音。
雨の音も、もちろん聞こえてくる。


「明日も丸一日こんな調子なら、引き上げは無理だね」

「ちょっとの天気でも、船は欠航するからな」

「亜弥と朱志香は船で通学してるわけだろ?天気が悪いと、学校サボれるのかよ?」

「そんなに甘くないよ〜。休みなら自習。午後から天気が崩れたら帰れなくなっちゃうし」


亜弥は苦笑気味にそう説明した。
朱志香はそんな亜弥の隣に、ボスッと音を立てて座る。


「私は島生活なんてうんざりだね。早くこんな島とは、おさらばしたいよ。
マンションでも借りて、亜弥と2人っきりの生活…ふふっいいかも」

「おいおいおいおい!!」

「んだようっせーなぁ、戦人は。冗談に決まってんだろ」


正直、冗談で言っているようには見えなかった。
戦人は口元がひきつっているのを感じた。

そのときノック音と共に、嘉音の声がドア越しから聞こえてきた。


「お食事の準備が整いました。お屋敷へお越しください」

「嘉音だ!」


扉に駆け寄ると、亜弥は勢いよくドアを開ける。
そして嘉音に抱きついた。
驚きながらも、嘉音は亜弥を受け止める。


「亜弥様…苦しいです…」

「ちょっと待って、充電中なの」

「貴方は携帯か何かですか…?」


そんな冷ややかツッコミを入れるが、顔は穏やかで。

けれどそんな2人を快く思わない人物もいる。


「なぁにやってんだよ、亜弥!充電なら俺でいいじゃねぇか〜」

「ひゃっ」

「!?」


戦人が後ろから亜弥を抱きしめ、嘉音から引き離した。
嘉音は、戦人を睨みつける。
それに気づいた戦人はあっけらかんとした笑顔をする。


「どうかしたのかぁ?嘉音くん」

にやりと戦人は笑った。

明らかに挑発している。
嘉音はそんな戦人と、顔を真っ赤にして戦人から抜け出そうとしている亜弥を交互に見つめる。
そして、溜め息を漏らした。


「戦人様、亜弥様が嫌がっていますので、離して頂けますか?」

「亜弥は嫌がってねぇぞ。な、亜弥〜?」

「ん゛ー!!」


戦人の手が、亜弥の口を塞いでいる。
嘉音の体が、少しだけ震えた気がした。


「離してください、戦人様」

「…!」


キッと戦人を睨みつける。
とてつもない威圧感が戦人を襲う。
そして思わず手を離してしまった。


「ううーっ嘉音!!」

「大丈夫ですか?」

「窒息するかと思った…」

「す、すまねぇ」


申し訳なさそうに頭を掻く戦人。
亜弥は仕方ないなーと言って笑った。

そんなとき、嘉音は何かを思い出したかのように室内を見渡した。


「…真里亞様はいらっしゃいませんか…?」


嘉音の質問に、亜弥たちは不安になり、外へと駆け出した。


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