どうしようかと困り果てていたとき、楼座がやって来た。


「そんなところで、どうしたの皆?何か探し物?」

「楼座おばさん…」

「うー!真里亞の薔薇!ママも探して!」

「元気のない薔薇に、飴の包みで目印をつけてあったんです。…でも、見つからなくて」


譲治は事の経緯を楼座に話す。
楼座は周りをざっと見渡した。


「…ないわよ。他の場所の間違いじゃない?」

「うー!ここにあるの!ママも信じてくれない!うーうーうー!!」

「…ちゃんと信じて探してるでしょ。うーうー言うのをやめなさい」


楼座は困ったように眉をひそめる。
その言葉を聞いた真里亞は、さらに声を大きくした。


「うー!ここなの!ここにあるのにないの!!うー」

「じゃあ誰かが抜いちゃったんでしょ…!あきらめなさい!うーうー言うのをやめなさい!!」


言葉を強くして折檻する。
けれど真里亞はうーうーと言い続ける。
瞳から涙が零れ落ちた。


「うーうーうー!真里亞の薔薇抜いたの誰ッ!!返してッ!!うーうー」


次の瞬間、痛々しい音が鳴り響いた。
一瞬、誰もが目を疑う。
あの温厚で優しい楼座が、真里亞の頬を叩いたのだ。
それも、真里亞が吹き飛ぶくらい力強く。

そして、恐ろしい形相で楼座は怒鳴りだした。


「そのうーうー言うのやめなさいって言ってるでしょ!」


真里亞は大声を出して泣き出す。
うーうーと言いながら。
それを聞いた楼座は、さらに真里亞を叩き出す。

亜弥も、そして他のみんなも、ただただ目を丸くしながらその光景を見つめるばかり。


「ろ…楼座おばさん。いくら娘でも、暴力はいけねぇっすよ…」


「戦人くんは黙ってて!この変な口癖のせいで、友達の一人もいないのよ?この子の将来に関わることなの!」


そしてまた、うーうーと泣き続ける真里亞を怒鳴りつける。

譲治はそっと、戦人の肩に手を乗せた。


「兄貴…別にどういう言葉遣いだろうと、関係ねぇだろ…!」

「そのま大人にはなれないよ…。心苦しいけど、これはおばさんたち親子の問題だよ。
僕らはゲストハウスに戻ろう」


戦人は不安げに真里亞を見る。
殴られたため、頬が真っ赤に腫れ上がっている。


「行こうぜ戦人…亜弥」

「う、うん…」

「…俺たちはゲストハウスに戻ってるからな、真里亞」


うーうーと泣き続ける真里亞にそう告げると、戦人は亜弥の腕を引き歩く朱志香の後に続いて帰って行った。

その後も泣きわめく真里亞に、楼座は諦めたのか背を向けて歩き出す。

「そんなに探したいなら一人で探しなさい!ママは知りませんっ!!」

「うー!探す!一人で探す!
うーうーうーうーうー!!」


歩き続ける楼座の顔はつらそうで。
ぎゅっと真里亞を叩いた手を強く握り締めていた。


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