04.楽しい昼食会



書斎の戸が強く叩かれる。


「…お父さん!」


蔵臼は、父親である金蔵に呼びかける。
ドンドンと扉を叩きながら。


「お父さん、年に一度の親族会議の日ではありませんか。皆下に集まっています。どうか、お出でください」


蔵臼の言葉を無視し、金蔵は激しく本のページをめくっていく。


「お父さん、おと…」

「やかましいッ!!」


堪忍袋の緒が切れたらしく、バンッと力強く机を叩いた。


「私を書斎から引きずり出そうとする者など、殺して魔女の炉にくべてしまえッ!!!なぜこの貴重な一日に、私は邪魔を受けねばならないのかッ!!!
緑の妖精の囁きが届かぬ!源次を呼べい!!苦艾の魔酒を用意させろ!!!」


怒り狂う金蔵に、蔵臼は諦めたらしく、扉に背を向け歩き出す。


「…呼ぶだけ無駄のようだ。源次さん、親父殿を頼む」

「…畏まりました」


源次は離れて行く蔵臼の背に、軽くお辞儀をした。



【第4話:楽しい昼食会】





書斎に行っていた蔵臼が、一同のいる食堂に戻ってきた。


「待たせたな、諸君。親父殿は来ないと仰せだ。我々はランチを始めようじゃないか」

「さんざん待たせといて、結局祖父様は来ねぇのかよ」

「こんなの日常茶飯事だぜ。最近じゃあ、亜弥が呼んでもこねーし」

「仕方ないわよ、お姉様。お祖父様は、ベアトリーチェにご執心だもの」

「!?」


いい子モードの亜弥を初めて見た戦人は目を丸くさせる。
そして、肘で亜弥の腕を小突いて耳打ちする。


「おい、亜弥。どうしちまったんだよぅ?」

「何が?」

「いや、だってよ…」


しらを切る亜弥に、戦人は戸惑う。
そんな戦人に、亜弥はくすくすと笑った。


「ねぇ戦人お兄様は、魔女を信じる?」

「へっ?いや、そんなうさん臭ぇものいるわけ…」


いきなり何を言い出すんだと思いつつ、戦人は返事を返す。
すると真里亞は怒った顔をして、ナイフを戦人に向けた。


「うー、魔女は"い"る!ベアトリーチェは"い"る!!」


真剣な顔でそう言う真里亞に、戦人は一瞬固まる。


「ふふ、真里亞は魔女を信じているものね」

「うー、亜弥は?」

「真里亞が信じているなら、私も信じるわ」


その言葉を聞いて、真里亞はにっこり笑顔になる。


「さあ、真里亞ちゃん。ランチを頂こうよ」


譲治の一言で、楽しい食事会が始まった。


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