書斎の戸が強く叩かれる。
「…お父さん!」
蔵臼は、父親である金蔵に呼びかける。 ドンドンと扉を叩きながら。
「お父さん、年に一度の親族会議の日ではありませんか。皆下に集まっています。どうか、お出でください」
蔵臼の言葉を無視し、金蔵は激しく本のページをめくっていく。
「お父さん、おと…」
「やかましいッ!!」
堪忍袋の緒が切れたらしく、バンッと力強く机を叩いた。
「私を書斎から引きずり出そうとする者など、殺して魔女の炉にくべてしまえッ!!!なぜこの貴重な一日に、私は邪魔を受けねばならないのかッ!!! 緑の妖精の囁きが届かぬ!源次を呼べい!!苦艾の魔酒を用意させろ!!!」
怒り狂う金蔵に、蔵臼は諦めたらしく、扉に背を向け歩き出す。
「…呼ぶだけ無駄のようだ。源次さん、親父殿を頼む」
「…畏まりました」
源次は離れて行く蔵臼の背に、軽くお辞儀をした。
【第4話:楽しい昼食会】
書斎に行っていた蔵臼が、一同のいる食堂に戻ってきた。
「待たせたな、諸君。親父殿は来ないと仰せだ。我々はランチを始めようじゃないか」
「さんざん待たせといて、結局祖父様は来ねぇのかよ」
「こんなの日常茶飯事だぜ。最近じゃあ、亜弥が呼んでもこねーし」
「仕方ないわよ、お姉様。お祖父様は、ベアトリーチェにご執心だもの」
「!?」
いい子モードの亜弥を初めて見た戦人は目を丸くさせる。 そして、肘で亜弥の腕を小突いて耳打ちする。
「おい、亜弥。どうしちまったんだよぅ?」
「何が?」
「いや、だってよ…」
しらを切る亜弥に、戦人は戸惑う。 そんな戦人に、亜弥はくすくすと笑った。
「ねぇ戦人お兄様は、魔女を信じる?」
「へっ?いや、そんなうさん臭ぇものいるわけ…」
いきなり何を言い出すんだと思いつつ、戦人は返事を返す。 すると真里亞は怒った顔をして、ナイフを戦人に向けた。
「うー、魔女は"い"る!ベアトリーチェは"い"る!!」
真剣な顔でそう言う真里亞に、戦人は一瞬固まる。
「ふふ、真里亞は魔女を信じているものね」
「うー、亜弥は?」
「真里亞が信じているなら、私も信じるわ」
その言葉を聞いて、真里亞はにっこり笑顔になる。
「さあ、真里亞ちゃん。ランチを頂こうよ」
譲治の一言で、楽しい食事会が始まった。
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