丁度そんなとき、戸を叩く音が。


「…失礼いたします。お食事のご用意ができました…」


声の主は、紗音で。
亜弥は中に入るように声を掛けた。


「紗音っ戦人がいるんだよ!入っておいでよっ」

「は、はい。失礼いたします」


カチャっと遠慮がちに扉が開かれた。


「ご…ご無沙汰しております、戦人様」


紗音は恥ずかしそうに俯いた。


「おお〜!?あんた紗音ちゃんかよ?すっかり美人になったじゃねぇのよ〜!」

「も…もったいないお言葉…恐縮です…」


照れくさそうに返事をすると、譲治の方へ向いた。
とても嬉しそうな顔をして。


「譲治様も、お元気そうで…」

「うん、元気だよ。久しぶりだね、紗音ちゃん」


譲治もまた嬉しそうな顔をした。


「戦人くん、さっき会った嘉音くんは、彼女の弟なんだよ」

「弟?」


意外と言わんばかりに、譲治の言った言葉を繰り返す。


「弟に会いましたか…何か失礼なことはしませんでしたか?」

「いつも通りだよ。ただちょっとムキになっててさ」

「??」

「亜弥が絡むと、嘉音くんって性格変わるよな〜」

「あ、なるほど」

「え、どういうこと?」


朱志香の言葉を理解し、紗音はゆるりと笑みを浮かべた。
亜弥はというと、よく意味が分からずに首を傾げる。

そんな中、戦人はブスッと不満そうにしていた。


「どうしたんだよ?」

「べぇっつにー。それより、」


ニヤニヤと何か企んでいますと言わんばかりの顔で、亜弥と紗音を見る。


「まだ、おさわりしてなかったよなぁ〜?」


戦人の手が、怪しげに動く。


「朱志香とどっちがでかいか、確かめさせてもらおうかぁ〜」


鼻息を荒くして2人に近づいていく。
すると、


「私の亜弥に触んじゃねー!!」

「ぐはぁっ」


朱志香の鉄拳が、見事に戦人の頭に直撃した。
戦人は痛そうに自分の頭をさする。


「なっなんだよ!いいじゃねーか!」

「よくねぇよっ!」

「俺は、亜弥の未来の夫なんだよぉ!」


その台詞に、朱志香の顔が引きつった。


「寝言は寝ていいやがれー!!」

「ぎゃぁぁぁああ!!」


鬼とかした朱志香の攻撃に、いとも簡単に戦人は倒れた。


「たく、よく聞けよ戦人!大体亜弥にはなぁ…」


朱志香が何か言いかけたとき、真里亞の見ていたアニメが終わり、ニュースが始まった。
そして、その内容に思わず言葉をつぐんだ。


『─お昼のニュースです。大型で足の遅い台風××号は、本日夕方から夜にかけ、関東地方に上陸するもようです。』


「こっちはまだ影響ないみたいだね」


亜弥は窓から外を覗く。
空を見て、何だか不安な気分になった。


「…えっと、食事の用意ができたんだっけ?」

「は…はい!失礼しました。皆様をお屋敷にご案内致します」


紗音の言葉で、一同は屋敷へと向かうことになった。




本家の屋敷はかなり大きい。
古い建物で設備は弱いようだが、亜弥はこの屋敷が大好きだった。


「食堂にて、親御様方がお待ちです。どうぞこちらへ…」


ようやく食堂に到着したようだ。
一体、どれくらい歩いただろうか。
屋敷の入り口から今いる廊下まで、かなりの距離があったことは確かだ。


「今日のメシは期待していいぜ?以前にホテルのシェフやってた使用人がいてさっ」

「ほうほーう!そーりゃ楽しみだ」

「むっ私あんまりあの人好きじゃない」

「お、亜弥がそんなこと言うなんて珍しいじゃねーか」


拗ねたように言う亜弥に、戦人は面白げに笑った。


「よしっ行こうぜ真里亞!犬みたいに食い散らかすぞ!」

「うー!犬みたいに食い散らかす!」


やる気満々に両手を動かす。

そんなとき、ふと後ろから視線を感じた。
ばっと後ろを振り返ると、一枚の肖像画が目に入った。
ドレスを身にまとった、1人の美しい女性の─


「…なんだこりゃあ……」

「うー…ベアトリーチェ」

「ベア…トリーチェ?」


真里亞の言葉に、戦人は眉をひそめる。


「ああ…戦人が来てた頃は、この絵もなかったっけな」

「一昨年あたりだったと思うよ。絵がかけられたのは…」

「そうそう!いきなり飾りだしてビックリしたもんっ」

「うー、ベアトリーチェ!」


「…そうです、それはお館様が画家に描かせた…六軒島の魔女、ベアトリーチェ様の肖像画です」


紗音の言葉を聞き、震えた声で戦人は繰り返した。


「…魔女」


─これが俺と魔女の、最初の出会いだった。



to be continue..


書きにくいっ!
元々ヒロイン視点とかキャラ視点で書いてたから、こういう書き方苦手です…。
でもその人その人で感じ方も違うから、ヘタにヒロイン視点にしても、同意できるとこと、できないとこがあると思うんだよね´`
…もしかしたら次は戦人視点かもしれないけど(爆)
こういう書き方の方が読みやすい!等があれば、教えてください^^
その通りには書けないかもだけど←

20090701



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