「おぅーい戦人ぁ!」
「何だよ?」
父親の留弗夫に呼ばれ、戦人は返事を返す。
「俺たち親一同は、本邸にあいさつに行ってくるから…ほらよっ」
どさどさどさと、戦人に持っていた荷物を渡す。 さすがの戦人も、その量と重さに唖然とした。
「あああぁあんのクソ親父ぃぃい!!」
「戦人っ私も手伝うから、落ち着いてぇ〜!」
「亜弥…」
亜弥の優しい心遣いに、戦人は感動して涙が出そうになる。
ああ、亜弥はやっぱり昔と全然変わんねーぜ。 俺はやっぱりまだ、こいつのことが…。
そっと亜弥の頬へと手を伸ばす。
「2人の世界に入ろうとすんじゃねー!」
「うーっ戦人、1人で持つ!」
「じゃあゲストハウスに行こうか」
「ほら、行くぜ亜弥」
「えっでも荷物が…」
「んなの、力持ちの戦人がなんとかするって」
そう言い、ぐいぐいと亜弥の腕を引っ張っていく。
「おぉぉぉおいっ!ちょっと待てぇぇえ!!」
戦人の悲痛な叫び声が、風と共に周りに吹き荒れる。
そんな戦人と、朱志香に引きずられてうなだれている亜弥を遠くの方で交互に見つめていた嘉音はぽつりと呟いた。
「……僕だって…」
ざわぁっ…と、風が彼を過ぎった。
【第3話:飾られた肖像画】
ゲストハウスにたどり着くと、戦人はソファに倒れ込んで独占した。 結局、荷物は全て戦人が1人で運んだ。 そのため、疲れ切ってしまったようだ。
「つ、疲れた…」
「戦人、ごめんね?」
団扇で戦人を扇ぎながら、亜弥はしょぼんとする。 そんな亜弥を見て、戦人はにっと笑って頭を撫でた。
「いっひっひ。これくらい全然へっちゃらだぜ」
「…今度は鉄アレイ持たせんぞ」
「っ!?」
ぼそっと物騒なことを言う朱志香に、戦人は目を丸くさせた。
「そ、そういやーもう6年経っちまったんだよな!いやー、時の流れを感じるねぇ」
「あははっそりゃあね」
「6年も経ちゃあいろいろ変わるぜ」
無理やり話を変えたものの、意外にもみんな乗ってくれて。 戦人は胸を撫で下ろした。
「そうだよな、朱志香にゃあ乳ができたし」
ニヤニヤ顔でそう言うと、朱志香はびくっとした。
「亜弥は昔から可愛いかったが、さらに可愛いくなって」
そんなことないよ〜と、亜弥は苦笑する。
「真里亞もすくすく育ったし。兄貴なんか、成人しちまったもんな!結婚とかどうなんだ?」
「……えっ!?」
戦人の問いに、譲治の頬は赤く染まる。 その反応に気分をよくしたのか、さらに言葉を続けた。
「結婚を考えてる人の一人や二人いたりしねぇのかよぅ」
「いやそんな…二人なんでいるわけないじゃないか」
「んん?じゃあ一人はいるのかよ?兄貴、何か隠してるなぁ?」
「ご、誤解だよ、戦人くん」
その光景に、亜弥と朱志香は可笑しそうに笑った。
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