屋敷を目指し、一同は森の中を歩いて行く。
そんな中、譲治が口を開いた。


「朱志香ちゃん、お祖父様の容態はいかがなんだい?」

「祖父様なら相変わらずピンピンしてるみたいだせ。な、亜弥」

「うん、何か最近またいろいろやってるみたいだよ」


亜弥の言葉に、戦人は若干顔をひきつらせた。


「いろいろって…まさか例のアレか?」

「うん、黒魔術」

「マジかよ…」

「さらには身内との交流も断絶!一部の使用人にしか、心を開かない状態だぜ?ま、亜弥は例外だけどな」


亜弥は他の身内と違って、金蔵に気に入られている。
そのため、書斎に入ることもできるのだ。


やれやれといった感じで、戦人は階段を上っていく。
上までついたとき、目の前の光景に思わず声が漏れた。


「…お」


一面に広がる薔薇。
先ほどの嫌な話が、一瞬で消し去った。


「今年も相変わらず立派だね。本家自慢の薔薇庭園は…!」


みんなは思い思いに、薔薇に近寄る。


「ほら真里亞ちゃん、薔薇が立派だよ」

「うー、薔薇が立派!」


真里亞は嬉しそうに両手を上げた。


「ん?」

「どうしたの?」

「うー、亜弥、この薔薇だけ…変…」


しゃがみ込む真里亞の目線の先には、しおれかけた一輪の薔薇が。


「本当だ…」

「可哀想だね。…それなら」


譲治は、飴の包みを薔薇につけた。


「へー、可愛くなったじゃねぇか」

「さすが譲治お兄ちゃん!」

「うー!真里亞の薔薇。真里亞の…」


真里亞は嬉しそうに薔薇を見つめている。
そんな彼女を亜弥はにっこり笑顔で見ていた。


「あれ、嘉音くんじゃん」

「あっ本当だ!嘉音〜!!」


朱志香の言葉で向こうの方で荷車を引いている嘉音の姿に気づくと、亜弥は駆け寄り勢いよく抱きついた。
すると嘉音は驚き、乗せていた肥料の袋を落としてしまった。


「あ、ごめんなさい…」

「お気になさらないでください、大丈夫ですから」


落ちた袋を拾おうとするが、あまりの重さになかなか持ち上げることができない。


「大丈夫かよ?手伝うぜ」

「あ…!結構です、全て僕がやりますので…」


そう言われたものの、戦人は袋を持ち上げていく。


「気にすんなぁ!こう見えても鍛え方が違うぜ!どうだ亜弥っ惚れ直したか?」

「へ?」

「…っ」


戦人の言葉に、嘉音は一瞬顔を歪ませる。
そして手近にある袋を一生懸命持ち上げた。


「か、嘉音…大丈夫?」

「これくらいっ平気です…!」

「あの嘉音くんがむきになってる…」


見たことない嘉音の姿に、朱志香は呆然となった。


「よしっと!」


全ての袋が無事荷車に乗せられた。
ほとんどは戦人がやったわけで。
嘉音は内心不服そうにしていた。


「戦人、彼は使用人の嘉音くん。うちに勤めて3年になるんだぜ」

「そっか!俺は戦人!よろしくな」

「…はじめまして。使用人の嘉音です」


笑顔で挨拶をする戦人とは打って変わって、嘉音はあまり感情を込めずに挨拶をした。


「年近そうだな!気さくに呼び捨てにしてくれよ」

「お気持ちだけで結構です、戦人様。僕たちは…家具…なので」


ポツリポツリと嘉音はそう返事を返した。
戦人は驚いたらしく、少し呆然とする。


「嘉音!」


泣きそうな、怒ったような。
そんな亜弥の声が、彼の名を呼んだ。
嘉音はしまったと思い、亜弥の傍に寄る。


「申し訳ありません、亜弥様」


だから、どうか泣かないで…。

嘉音の瞳が愛しそうに亜弥を見つめてそう言っているように戦人には思え、何だか少しだけ胸が苦しくなった。



to be continue..


嘉音⇔亜弥←戦人
多分こんな感じです。
これから変動するかもしれないし、しないかもしれない←
とりあえず、こんなことで戦人が素直に亜弥を諦めるはずかないということは確かです^^
20090630