03


いってぇ…と頭を擦るタカオのことが心配になり、傍に寄る。


「タカオ…大丈夫?」


様子を見ようと思い屈むと、お皿の上にあった肉まんを一つタカオが取った。
驚いて目をパチパチさせていると、私の方を向いてタカオがニヤリと笑う。
そのときようやく、どういうことなのか気がついた。
それは近くにいたヒロミも同じだったようで、私が口を開くより先に声を上げた。


「タカオあんた…アヤを騙したわね!」

「だっれ食ひたかったんらかりゃひかたにぇらろ」


食べながら喋っているため、なんとなくしか聞き取ることができない。
とりあえず、今にもまたぶん殴りそうな形相をしているヒロミを宥めるため、立ち上がる。


「落ち着いて、ヒロミ。私気にしてないから」

「アヤ、だけど…」

「それに、みんなで食べた方が美味しいし」


ね?と、ヒロミに肉まんを一つ差し出す。
すると諦めたのか、はあ…と溜め息をはいてそれを受け取った。
それを見て私はニッコリと笑い、近くにいたマックスとキョウジュにも、どうぞと渡す。

「ありがとネ、アヤ」

「ありがとうございます、アヤさん」

「どういたしまして」


そして私は、壁にもたれ掛かりながら目を伏せ腕を組んでいるカイの元へ向かった。


「あ、あの…カイ」

「…なんだ」


閉じられていた瞼が開き、瞳が私を映す。
ただそれだけのことなのに、内心ではかなりビクリとしてしまった。
どうしてだか、私はこの人を前にすると少しばかり臆してしまう。
えーいっ頑張れ私!と、心の中で意気込んで口を開く。


「カイも、肉まん食べるでしょ?」


はい、と一つ差し出す。
カイはそれを一瞥すると、再び目を閉じてしまった。


「いらん。お前が食え」


素っ気ない返事が返ってきて、何だか少し悲しい気持ちになった。


「うん…分かった」


くるりと踵を反すと、ヒロミたちのところへ向かう。
その頃の私には分からなかったんだ。
それがカイなりの優しさだったってことに。



やっぱりカイって苦手!
(あのとき気がつかなくて、本当にごめんなさい)


20101226




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