10


道端で雑談しているのもあれなので、私たちは再び歩き出した。
やはり隣には並べないので、少し後ろをついていくようにして足を動かす。
少し経てば、広い公園に着いて。
カイがベンチにドカッと座り足を組む。
それをただ立ったまま見ていると、カイが気付いて声を掛けてきた。


「座らないのか?」

「あっ、すっ座る!」


ベンチの端に腰を下ろす。
カイとは人一人分の距離が空いている。
前まではあまり気にならなかったが、よく考えてみれば結構離れている。
タカオやヒロミが相手なら、こんなスペースは空かないのに。
カイをちらりと見てみるも、特に気にしてはいない様子で。
この人にとってはこれが普通なのかも…と、そう思った。
それにしても、本当に静かでいいところだ。
木々の間から射し込んでくる太陽の日差しが心地よい。
あまりの気持ちよさに、瞼が重くなってきて。
おやすみなさいと、夢の中に入っていこうとする。


「…レイとはどうなんだ?」


その言葉で、一気に眠気が吹き飛んだ。
目を開けてカイの方を見る私はきっと、驚いた表情をしているだろう。


「いいいいきなり何!?」

「どもってるぞ」

「だってカイがいきなりそんなこと聞いてくるから…!」


そうだ忘れていた、カイもまた私がレイに片想いしていることを知っているのだ。
ヒロミの情報だと、タカオが口を滑らせたらしい。
本当、タカオがレイにまで喋らないかがものすごく不安だ。


「…で、どうなんだ?」

「どうって言われても、特には何も…」

「なんだ、まだ付き合ってないのか?」


普段の彼からは絶対に聞くことのない言葉がいくつも出てくる。
けれどやはり、素っ気ないというか冷たい物言いは相変わらずのよう。
一瞬返事に困ったが、私は事実をそのまま伝えることにした。


「付き合ってないよ。まず、そんな対象にも見られてないと思う…」


何だか自分で言ったことなのに、泣きそうになってきた。
カイに泣き顔なんて見られたくなくて、何とか自然に指で涙を拭う。
上手くいったと安堵したのとほぼ同時くらいに、カイの言葉が耳に入ってきた。


「悪かった…だから泣くな」


カイにはお見通しだったようで。
それだけのことなのに、まるで全てを見透かされているように感じた。


「ううん、私が勝手に泣いただけだから気にしないで」

「だが…」

「私、頑張ってみるよ。レイのこと」

「……ああ」


いつの間にか、カイへの苦手意識はなくなっていて。
その代わり、別の何かが芽生えたような気がした。
それは決して嫌なものじゃなくて…そう、まるでこの公園のように心地のよいもので。
このときの私はまだ、その感情の意味が分からないでいた。



カイの隣って、何だか落ち着く。
(そんな風に思うなんて、昔じゃ考えられなかったなあ)


20110103




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