道端で雑談しているのもあれなので、私たちは再び歩き出した。 やはり隣には並べないので、少し後ろをついていくようにして足を動かす。 少し経てば、広い公園に着いて。 カイがベンチにドカッと座り足を組む。 それをただ立ったまま見ていると、カイが気付いて声を掛けてきた。
「座らないのか?」
「あっ、すっ座る!」
ベンチの端に腰を下ろす。 カイとは人一人分の距離が空いている。 前まではあまり気にならなかったが、よく考えてみれば結構離れている。 タカオやヒロミが相手なら、こんなスペースは空かないのに。 カイをちらりと見てみるも、特に気にしてはいない様子で。 この人にとってはこれが普通なのかも…と、そう思った。 それにしても、本当に静かでいいところだ。 木々の間から射し込んでくる太陽の日差しが心地よい。 あまりの気持ちよさに、瞼が重くなってきて。 おやすみなさいと、夢の中に入っていこうとする。
「…レイとはどうなんだ?」
その言葉で、一気に眠気が吹き飛んだ。 目を開けてカイの方を見る私はきっと、驚いた表情をしているだろう。
「いいいいきなり何!?」
「どもってるぞ」
「だってカイがいきなりそんなこと聞いてくるから…!」
そうだ忘れていた、カイもまた私がレイに片想いしていることを知っているのだ。 ヒロミの情報だと、タカオが口を滑らせたらしい。 本当、タカオがレイにまで喋らないかがものすごく不安だ。
「…で、どうなんだ?」
「どうって言われても、特には何も…」
「なんだ、まだ付き合ってないのか?」
普段の彼からは絶対に聞くことのない言葉がいくつも出てくる。 けれどやはり、素っ気ないというか冷たい物言いは相変わらずのよう。 一瞬返事に困ったが、私は事実をそのまま伝えることにした。
「付き合ってないよ。まず、そんな対象にも見られてないと思う…」
何だか自分で言ったことなのに、泣きそうになってきた。 カイに泣き顔なんて見られたくなくて、何とか自然に指で涙を拭う。 上手くいったと安堵したのとほぼ同時くらいに、カイの言葉が耳に入ってきた。
「悪かった…だから泣くな」
カイにはお見通しだったようで。 それだけのことなのに、まるで全てを見透かされているように感じた。
「ううん、私が勝手に泣いただけだから気にしないで」
「だが…」
「私、頑張ってみるよ。レイのこと」
「……ああ」
いつの間にか、カイへの苦手意識はなくなっていて。 その代わり、別の何かが芽生えたような気がした。 それは決して嫌なものじゃなくて…そう、まるでこの公園のように心地のよいもので。 このときの私はまだ、その感情の意味が分からないでいた。
カイの隣って、何だか落ち着く。 (そんな風に思うなんて、昔じゃ考えられなかったなあ)
20110103
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