09


目を覚ますと短針は9時を指していてた。
いつもは11時くらいまで寝てしまい、お母さんに起こされる。
珍しく朝自分で起きられたなと何だか清々しい気持ちになった。
気分がいいから、少し散歩に出掛けようかな。
運のいいことに、今日は土曜日で授業もない。
朝ごはんを簡単に済ませると、私は外へと飛び出した。
昨日は結局、あの後また少しタカオの話を聞いて自分の家に帰ったの。
色々あって疲れが溜まっていたのかすぐに眠りにつけたため、今日こうして起きることができたのかもしれない。
タカオありがとう、なんて心の中でお礼を言ってみる。
きっとまだ熟睡してるだろうから、後で起こしに行ってみようかなと珍しく悪戯心が芽生えて。
思わずスキップしたくなるくらい、今日は本当に調子がいいな。


「今の私なら、あのカイだって怖くないんだから!」

「…どうでもいいが、前を見て歩け」


前方から声が聞こえたと思えば、次の瞬間ドンッと何かにぶつかって。
反動で体が後ろによろめき、衝撃がくることを覚悟して目を瞑る。
けれどいつまで経ってもそれはこなくて、私は不思議に思い目を開いた。


「かっカイ!」


目の前にはカイの顔があった。
それもかなりの至近距離に。
さらに自分の腕は彼の手に掴まれ、背は支えるようにして腕を回されていて。
それを見た瞬間、一瞬にして顔に熱が集まった。


「だから前を見ろと言った」

「ご、ごめんなさい…」

「…フン、先ほどの威勢は何処に行ったんだかな」


聞かれてた!と、その事実に気付き一気に体中の熱が引いていく。
カイは私の腕を掴んでいた手を放すと、さっと離れてしまって。
そのため、向き合う形になってしまった。


「あの…さっきのは何でもなくて…」

「……」


慌ててそう誤魔化すけれど、カイには無言で。
こうなったら話をすり替えるしかない、そう思い私は思いきって話題をかえた。


「あっあれ…、カイ制服着てる!もしかして学校行く途中?」

「…いや、今日はもう終わった」


なんだろう、少し歯切れが悪い気がする。
私の中で、何かが閃いた。
これはもしかして…。


「さてはカイ、サボったんでしょ!」

「…何故そう思う」

「何となく。『こんなくだらん授業など、受ける価値もない…』とか言ってたりして!」

「なるほどな。お前は俺のことを、そういう目で見ていたわけだ」

「あ…あははは。じょっ冗談ですごめんなさい…!」


カイに睨まれ、私は急いで謝った。
これこそまさに、蛇に睨まれた蛙。
私は決して、蛇であるカイには逆らえないのだ。
そんな私を一瞥し、カイは明後日の方向を向いて口を開いた。


「まあ…お前の言う通りなんだがな」


それを耳にし、思わず私は予想が当たったことに口元が緩んだのだった。



何だか最近、カイのこと分かってきた気がする!
(…何を笑っている)


20110102




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