目を覚ますと短針は9時を指していてた。 いつもは11時くらいまで寝てしまい、お母さんに起こされる。 珍しく朝自分で起きられたなと何だか清々しい気持ちになった。 気分がいいから、少し散歩に出掛けようかな。 運のいいことに、今日は土曜日で授業もない。 朝ごはんを簡単に済ませると、私は外へと飛び出した。 昨日は結局、あの後また少しタカオの話を聞いて自分の家に帰ったの。 色々あって疲れが溜まっていたのかすぐに眠りにつけたため、今日こうして起きることができたのかもしれない。 タカオありがとう、なんて心の中でお礼を言ってみる。 きっとまだ熟睡してるだろうから、後で起こしに行ってみようかなと珍しく悪戯心が芽生えて。 思わずスキップしたくなるくらい、今日は本当に調子がいいな。
「今の私なら、あのカイだって怖くないんだから!」
「…どうでもいいが、前を見て歩け」
前方から声が聞こえたと思えば、次の瞬間ドンッと何かにぶつかって。 反動で体が後ろによろめき、衝撃がくることを覚悟して目を瞑る。 けれどいつまで経ってもそれはこなくて、私は不思議に思い目を開いた。
「かっカイ!」
目の前にはカイの顔があった。 それもかなりの至近距離に。 さらに自分の腕は彼の手に掴まれ、背は支えるようにして腕を回されていて。 それを見た瞬間、一瞬にして顔に熱が集まった。
「だから前を見ろと言った」
「ご、ごめんなさい…」
「…フン、先ほどの威勢は何処に行ったんだかな」
聞かれてた!と、その事実に気付き一気に体中の熱が引いていく。 カイは私の腕を掴んでいた手を放すと、さっと離れてしまって。 そのため、向き合う形になってしまった。
「あの…さっきのは何でもなくて…」
「……」
慌ててそう誤魔化すけれど、カイには無言で。 こうなったら話をすり替えるしかない、そう思い私は思いきって話題をかえた。
「あっあれ…、カイ制服着てる!もしかして学校行く途中?」
「…いや、今日はもう終わった」
なんだろう、少し歯切れが悪い気がする。 私の中で、何かが閃いた。 これはもしかして…。
「さてはカイ、サボったんでしょ!」
「…何故そう思う」
「何となく。『こんなくだらん授業など、受ける価値もない…』とか言ってたりして!」
「なるほどな。お前は俺のことを、そういう目で見ていたわけだ」
「あ…あははは。じょっ冗談ですごめんなさい…!」
カイに睨まれ、私は急いで謝った。 これこそまさに、蛇に睨まれた蛙。 私は決して、蛇であるカイには逆らえないのだ。 そんな私を一瞥し、カイは明後日の方向を向いて口を開いた。
「まあ…お前の言う通りなんだがな」
それを耳にし、思わず私は予想が当たったことに口元が緩んだのだった。
何だか最近、カイのこと分かってきた気がする! (…何を笑っている)
20110102
|