カイが去った後、ずっと立ち止まっているのわけにもいかないので、私たちは家の方向へと歩き出した。 今度はレイの隣を歩いていく。 カイのときには緊張してそんなことできなかったけれど、レイが相手だとむしろ安心できる。 徒長ももちろん合わせてくれて。 好きだなあと、改めて実感した。
「そういやタカオはどうしたんだ?」
「前回掃除当番をサボったつけが、今日回ってきたの」
「ははっあいつらしいな」
笑う口元から、キラリと八重歯が光る。 その横顔に目をやりながら、やっぱりレイはかっこいいな…なんてしみじみ思ったり。 そんなとき、レイがふと思い出したかのように口を開いた。
「なあ…、アヤはカイが苦手だったよな?」
「…ま、まぁ少しだけ。でもどうして?」
いきなり何故そんなことを聞くのだろうと不思議に感じ聞き返す。
「いや…、にしてはさっき結構仲良さそうにしてたからさ」
頬を掻くレイが何だか可愛くて。 そのせいか、私の頬は緩んだ。
「そんなことないよ。それに急に帰っちゃったし」
「ああ…、一体どうしたんだろうな」
この話は、そんなレイの一言で終了した。 そして色々な話をしているうちに、気付けば家の前に着いていて。 そのときには明るかった空も、夕日が沈もうとしていた。
「着いたな」
「うん。えっと…ありがとう」
「気にするな」
もう少しだけでいいから一緒にいたいなんて思いが沸き上がってくる。 だけど、そんなこと恥ずかしくて口にはできない。 残念だけど家に入ろう、そう思って門を開けたそのとき。
「おーいっ!アヤー、レイー!」
「たっタカオ!?」
「ああ、本当だ。掃除終わったんだな」
大きな足音をたてながら、全力で私たちの方へ駆けてくるタカオの姿を視界にとらえた。 そして目の前で足を止めたかと思えば、膝に手をついてぜーはーぜーはーと息を吐き出した。
「大丈夫…?」
「お…う。学校からここまで…はぁはぁ、走ってきて、さ」
すごい体力だな、と思わず関心してしまう。 ちらりと視線をタカオからレイに向けると、苦笑いをしていた。
「そんなことより聞いてくれよアヤ!ほんっと人使い荒いんだぜー」
大分落ち着いたのだろう、もう息切れはしていなかった。
「掃除のこと?」
「そうなんだよ〜。あいつら俺にほとんど押し付けやがってよ…」
「タカオ、立ち話も何だから、部屋で続きを聞いてもらったらどうだ?」
レイがこちらをちらりと見てそう口にする。 優しい彼のことだ、私のことを気にかけてくれたのだろう。 話を聞くにしても、さすがに立ちっぱなしは疲れてしまう。 レイの言葉にタカオもそのことを悟ったらしく、慌てて首を縦に振り。
「あ…ああ、そうだな!アヤ、家来いよ」
半ば強引なタカオの言葉、だけどそんな彼が私には神に見えたのだった。
タカオ大明神さま! (もうタカオの愚痴でも何でも聞いちゃうっ)
20101231
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