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「…トルコキキョウ、だね」
「わかるの?」
「ガーデニングが趣味なんだ。そっか、もうこんな花が咲く時期なんだね」
差し出したお花を受け取ってくれた幸村君は、慈しむようにそれ触れて、本当にお花が好きなんだなあと私にも分かった。
「白の花の中に紫が一輪…?」
「…お花に詳しいなら、意味わかっちゃうかも」
幸村君の不思議そうな呟きに思わず苦笑しながら答える。
本当は言わないつもりだったんですけどね。
「花言葉…で考えていいの、かな?」
「うん、そうだよ」
「トルコキキョウは確か、深い思いやり…とかじゃなかった?」
幸村君の言葉に微笑んで返す。
トルコキキョウの花言葉は、幸村君の考えで正解。
だけど…
「…紫のお花は希望ただひとつ、白のお花には希望や深い思いやり、楽しい語らいっていくつか意味があるんだって」
「希望…」
「テニス部のみんなみたいだなあって思ったの」
目を見開いた幸村君と視線が合う。
花屋で花言葉を教えてもらってすぐ、これしかないなって思った。
「幸村君が病気を治してテニスをするって目標だけに専念できるように、テニス部のみんなが支えてるでしょう?同じ目標を持って、それでいて幸村君が無理をしすぎないようにみんなが呼吸を整えてくれるの」
信頼しあって、素敵な関係だなって思ったんだよ。
口を閉じた瞬間妙な気恥ずかしさに襲われた。
私、何を一人で語っちゃってるんでしょうか。
恥ずかしさをごまかすように笑って顔をあげると、真剣な表情の幸村君と目が合った。
「幸村君…?」
「…どうしよ、嬉しすぎて」
そう呟いた幸村君の顔は一気に綻んで、こちらまで嬉しくなるほどだった。
「喜んでもらえてよかった。実はね、病室に入るの緊張してたの」
「え!?なんで…」
「ジャッカル君以外のお友達と2人きりになるの初めてで、どうしたらいいのかなって一人でドキドキしちゃってた」
でも普通にお喋りできて安心してるの、と笑うと、幸村君は目を見開いてこちらを見ていた。
「お、俺も…」
「え?」
「俺も、緊張してた。っていうか進行形でしてるんだけど…」
そう言って苦笑する幸村君は見惚れるくらい綺麗で、そういえば前世の友達は幸村君のファンだったなあなんて思い出す。
「…白神さん?」
「幸村君って、すごく綺麗だね」
「…え!?」
つい口にしてしまった言葉に幸村君は心底驚いていて、私は慌てて口を塞いだ。
「お、俺なんかと比べ物にならないくらい白神さんの方が綺麗でしょ?」
「え…っ!?」
「なんでそんなに驚くの?」
「だって、照れるよ…」
見た目については自覚してるけど、流石に面と向かって褒められるなんて慣れてない。
それからお互いに変な褒め合いみたいになって、不意に顔を見合わせて2人同時に笑い出した。
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