15
--仁王side--
授業をサボってグラウンド付近を歩いていると、たまに会う野良猫に出会った。
『ミャー』
「お前さんか。丁度ええ、暇潰しに付き合いんしゃい」
芝生に胡座をかいて座り込むと、猫は太もも辺りに飛び乗ってきた。
ふあ、と欠伸をして空を仰いでいると、心地好い風がふわりと吹いた。
「……ん?」
肩に違和感を感じて視線を落とすと、そこには風で揺れる俺の結んだ髪を叩いて遊ぶ猫がいた。
「……ほれ」
その光景が面白くと指で髪を持ち上げて猫じゃらしのように遊んでいると、テンションが上がったらしい猫は思いっきり髪に飛び掛かってきた。
「うわっ、…ぐちゃぐちゃになったのう」
纏まりのなくなった髪を見つめて溜め息をつき、結び直すために紐をするりと解いた。
「そうじゃ。お前さんこれ持っといてくれんかの」
膝の上に居座る猫の首に紐を軽く結んで、リボンの首輪のようになったそれを不思議そうに扱う猫の頭を軽く撫でて手櫛で髪をまとめた。
「…よし。ほれ、返しんしゃい」
髪を纏めて首の紐に手を伸ばそうとした時じゃった。
「…仁王、またこんなところでサボっていたのか」
「参謀?」
急に現れた参謀に一瞬焦りを覚えたが、冷静に考えてみれば今日はこの猫に餌をやっていたわけじゃない。サボっていることにはとやかく言わないと分かっているので安堵したが、こいつにはそれがわからないようだった。
『ミャッ』
「あ」
参謀の姿を見て逃げて行った猫を呆然と見送っていると、参謀が口を開いた。
「お前が髪を解いているのは珍しいな」
「……あ、俺の紐」
「ふむ。今日は弦一郎の機嫌があまりよくない。部活の前には結んでおいた方がいい」
「……参謀、ゴムとか」
「ないな」
男でゴムを常備しとる奴なんて知り合いにはおらん。女子に借りるのは面倒じゃのう。
「追いかけるかの」
「俺が原因のようだからな、付き合おう」
重い腰を上げて参謀とともに猫が去って行った方向へと足を進めた。
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