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「丸井君いい人だったよね」


閉店後の片付けをしながら、お父さんに話し掛ける。


「そうだなあ…。見た目はチャラくて嫌だったけど、あんなに美味しそうに料理食べてくれたし、流石紗弥の選んだ友達だな!」


笑顔で私を褒められても、褒めるべきは丸井君だと思うんですよ、お父さん。

第一私も今日お友達になったから、丸井君のことは良く知らないんですけども。


「あ、明日もお母さんのところ行くんだっけ?」
「うん。そのつもりだったけど、何かあるの?」
「その帰りに病院の裏の本屋に寄ってくれないか?注文してた本が届いたみたいでさ」
「わかった、全然いいよ」


遅くならないように気をつけてな、と心配そうに見つめてくるお父さんに思わず笑ってしまう。
小学生のお使いじゃないんだから、大丈夫ですよ。


(お母さんの入院もあと4日だし、お父さんが無理しないように気をつけなきゃ)


いつも以上に気合いをいれてお店のことをしながら私に構ってくるお父さんに視線を向けながら食器に手をつけた。




――――――――――

「おはようございまーす」
「お、赤也じゃん。はよ」
「朝練ないのに早いなんて珍しいな」


ブン太と学校に向かう途中、赤也が走って寄ってきた。


「なんか昨日のこと嬉しくてテンションあがっちゃって!早く学校行きたくなったんスよー!」
「まるで小学生じゃの」
「あ、仁王先輩」
「お前さん朝から声でかいぜよ」


怠そうに声をかけてきた仁王に軽く挨拶をすると、自然と話の流れは紗弥のことになった。


「だってあの紗弥先輩と知り合えたんすよ!?夢みたいじゃないっすか!!」
「まあ確かにのう」
「学校でお喋りとかできちゃうかもだし!」
「まあできんじゃねえ?…そういやジャッカルってさ、紗弥とどんくらい仲いいんだよぃ?」
「…は?」


黙って話を聞いていた俺は突然振られたブン太の質問に思わず聞き返した。


「ブンちゃんいつから名前で呼んどるんじゃ」
「そんなんどうでもいいだろぃ!んで?どうなんだよぃ?」


真剣な目を向けてくるブン太に少したじろぎながら頭を働かせる。


「どんくらいって…、大事な友達だよ」
「ふーん…。じゃあ俺が狙ってもいいんだろぃ?」
「「「は!?」」」


予想外のブン太の言葉に俺以外の2人も目を見開く。え、何言ってんだこいつ…。


「憧れの遠い存在って思ってたけどよぃ、あんな親しみやすい可愛さ持ってるなんて知ったら欲しくなんじゃん?」
「…ま、否定はできんのう」
「狙うとかありなんスか!?じゃあ俺も参戦するッス!!」
「お、じゃあライバルだな!負けねえぜぃ?」
「あ!向こうに歩いてるの紗弥先輩じゃないッスか?」
「待ちんしゃい。更に向こうに見えるのは真田と柳生ぜよ」
「げ、風紀検査!?今日新発売のお菓子入ってんのに」


ポンポンと進む話に置いていかれたまま俺は呆然としていた。

あいつらが紗弥と関わったらこうなることくらい予想してたのに、いざこうなると頭がついていかない。


(紗弥が、あいつらの恋愛対象になる…?)


なんで、こんなにモヤモヤした気持ちになるんだ?



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