09




--丸井side--


「お母さんが入院してる間お店を手伝ってるの。普段も手伝うよって言ってるんだけど…」


白神様に店の手伝いをしている理由を聞くと、苦笑まじりの言葉が返ってきた。

っていうか、今日友達になってこんな風に喋れてるとか奇跡だろぃ。白神様が料理運んできてくれるのが嬉しくて、もう何回注文したかわかんね。…あ、冷静に考えたら白神様を働かせるなんてかなり失礼なことしてねえ?


「紗弥が定食屋なんてイメージじゃないだろ!?案の定丸井君から笑われてたし!」
「いや、悪い意味で笑ったんじゃないっすよ!?なんつーか、こんなに身近な人だったけ?みたいな…」


料理はまじで美味くて、その話で盛り上がってたら白神様のお父様の警戒心はあっさりなくなってくれた。やっぱ食べ物の話題ってすごいぜぃ。


「丸井君ね、ジャッカル君と同じテニス部なんだよ」
「え!?そうなの!?」
「はい!!」


白神様が俺の話を振ってくれたのが嬉しくて勢いよく返事したら、お父様の目つきが変わった。…え、なんでだよぃ?


「ちょ、丸井君こっち!!」
「へ?」


部屋の隅に引っ張られて慌ててついていくと、お父様は小声で口を開いた。


『ジャッカル君に詳しいの!?』
『へ?ああ、俺のダブルスのパートナーっすよ』
『…丸井君に頼みがあるんだけど』
『はい?』
『紗弥とジャッカル君がくっつかないように見張っててくれない?なんかあったら報告してよ』
『え?あ、全然いいッスけど…え、2人ってそんな感じ…?』
『わかんないけど!でも友情的な意味でも紗弥がジャッカル君大好きなのはわかるから、それ以上に進んでほしくないんだよ!!』
『…見張ってるうちに俺がくっつくとかいう危機感はないんですか?』
『ない!!紗弥はジャッカル君大好きだから!!』
『……なんか納得いかねえけど、いいっすよ!!俺もジャッカルにいい思いなんてさせたくないし!!』



「…何を話してるんでしょうか?」
「あはは、君が愛されてるってことだよ」
「え?」


白神様が首を傾げて呟いたことに、親父が言葉を返す。ちょ、余計なこと言ってんじゃねえよぃ!!


「白神様!!ジャッカルってこのお店のこと知ってんのかよぃ?」
「え?…えっと、言ってないと思う…」
「じゃあさ、俺と白神様の秘密にしようぜぃ?俺ここに通うから!!行きつけの店って誰にも教えたくないんだよ」
「えっと、それは大丈夫だけど…」


半ば無理矢理な提案をすると、白神様は戸惑いながら頷いてくれた。


(よっし!!これで一歩リード!!)


「なあ、俺もジャッカルみたいに名前で呼んでもいい?」
「え?あ、うん!!もちろん」
「よっしゃ!じゃあ紗弥!改めてシクヨロ!」
「し、しくよろ…?」


様付けとかされる程の人間じゃないんだよ、と苦笑する紗弥はすっげえ可愛いかった。戸惑いながらシクヨロって返してくれた姿も。


(ジャッカルの奴、こんな可愛い姿を独り占めしてたのかよぃ!!)


俺だって、ジャッカル以上に紗弥と仲良くなる!!



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