07
--丸井side--
「たっだいまー」
「お、お帰り」
幸村君の病院から機嫌よく帰って家に入ると、いつも飛び込んでくる弟たちではなく親父が出迎えてくれた。
「ん?ああ、今日親父だけか」
「みんな婆ちゃん家行っちゃったからなあ。…提案なんだけどな?」
「なんだよぃ」
「外食しないか?」
親父の提案に勢い良く反応する。正直俺も親父も料理はできるから外食なんてしなくてもいい。それをわざわざ持ち掛けるということは…
「良い店見つけたのかよぃ!?」
「正解!今日仕事で東京行ってさ、仲良くなった人に連れてってもらった定食屋が美味かったんだよ!外観はイマイチなんだけど安いし味は最高だしメニュー豊富!あそこのメニュー制覇したいんだよなあ」
ニコニコしながら話す親父を見て、親子だなとつくづく思う。そして親父の舌は信用できる。断る理由、ないだろぃ?
「よっしゃ、行こうぜぃ」
親父の運転で着いたのは、オフィス街には少し似合わないどこにでもあるような定食屋。
車中で聞いた話では、客は少ないはずだったんだが…。
「店の周り目茶苦茶人いるじゃんかよぃ!!」
「あれー?トラックの運転手みたいな客しかいなかったんだけどなあ…?」
よく様子を見てみると、違和感を見つけた。店の周りに確かに人は多いが、並んでいるわけじゃなさそうだ。どちらかと言うと、覗いてる…?
「入ってみるか」
「え!?あ、ちょっと待てって…」
全く気にすることのないマイペースな親父の後を慌てて追って、店に入った。
「いらっしゃいませー、あれ?お客さん昼間もいらっしゃってませんでした?」
「あ、覚えてますか!?いやー、美味くて息子連れてきたんですよ」
親父と話す店主は、定食屋とはイメージが結び付きにくい若くて小綺麗な男だった。
「それより外どうしたんです?店の中はお客さんいなかったから入ってきちゃったけど」
「あー、ははは…」
親父の質問に苦笑した店主に俺も首を傾げていると、店の奥の扉が開いた。
「お父さん、喋ってないで働いてね、…って、丸井君…?」
「え…?……えええ!?白神様!?」
店の前の人だかりの意味がわかった瞬間だった。
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