06




コンコンッ


「入っても、いい?」


病室に響いたノックの音に扉を開けると、不安そうな紗弥が立っていた。


「なんで紗弥がそんなに不安そうなんだ?」
「お母さんとジャッカル君が2人でいるなんて、なんか緊張しちゃって…」


苦笑いしながら答える紗弥に、思わず笑ってしまった。


「もうこんな時間なのね。お話が楽しくて気付かなかったわ」
「…なんの話してたの?」
「秘密。ね、ジャッカル君?」
「え、あ…はい」


笑いながら答えると、隣で紗弥が不満そうな表情をしているのが見えた。


(お母さんといると、いつもと違うな)


いつも以上に感情が素直に出ている紗弥を微笑ましく感じた。


「みなさんは?」
「あ、先に帰ったよ。だから呼びに来たの」
「じゃあ俺らもそろそろ失礼するか。…お話、ありがとうございました」
「こちらこそ、楽しかったわ。また会いましょう?」
「はい!失礼します」
「お母さん、また明日来るね」


笑顔で見送ってくれた紗弥のお母さんの病室を後にして、見舞い客がほとんど帰った病院の廊下を2人で歩いた。


「なんか悪かったな、赤也が無理矢理連れてきたみたいで」
「あはは、びっくりしちゃったけど全然大丈夫だよ?こちらこそ、お母さんが無理矢理ごめんね…?」


お互いに謝罪の言葉を述べて顔を合わせると、どちらともなく苦笑が零れた。


「ジャッカル君いなくなって、緊張しちゃった」
「あー、俺も。まさか紗弥のお母さんと2人になるとは思わなかったな」
「でもね、みんなとお友達になれたよ。ジャッカル君の周りの人達は、みんな面白くていい人ばかりだね」


紗弥の言葉に溜め息を尽きそうになる。紗弥が幸村の病室に来た時点で諦めていたことだったが…。


(あいつらと友達、なあ…)


「…ジャッカル君?」
「ん?ああ、何だかんだ言ってもあいつらいい奴らだからよ、仲良くなれるといいな」


一度近付くことができたら、あいつらが我慢するとは思えない。紗弥と一緒にいる時間が減らなければいいな…と苦笑いしていると、キョトンとした顔で紗弥はこちらを見つめていた。


「お友達が増えたのは嬉しいし、仲良くなりたいなって素直に思うんだけど…。クラスのみんなとお友達になった時とは少し違うかも」
「どういうことだ?」
「えっとね…、ジャッカル君が普段過ごしている世界と同じ光景が見れるのかなって楽しみの方が強いんだよ」


ジャッカル君が話してくれた部活の話が、すごく楽しそうだったから。

そう言って笑う紗弥の言葉が胸に染みる。紗弥の行動ひとつひとつに、俺を関わらせてくれているんだなと思うと口元が緩んだ。


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