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「あの…」
「無理矢理連れてきちゃってごめんなさいね?改めて、紗弥の母です」
「あ、初めまして!ジャッカル桑原と言います。紗弥さんと仲良くさせていただいています」


紗弥のお母さんから連れてこられた病室で、俺は腰をかけるように促され、されるがままに座っていた。

なんだか挨拶が勘違いされそうな言葉になってしまったが、間違ってはないと思う。


「あの、どうして…?」
「ジャッカル君にね、お礼が言いたかったの」


お礼、という言葉に疑問を持ってお母さんの顔を見ると、先程の無邪気な笑顔とは違う柔らかな笑顔でこちらを見つめていた。


(…あ、その顔紗弥に似てる……)


「お礼、ですか…?」
「そう。…あの子と友達になってくれて、ありがとう」
「…え!?」


紗弥と同じ雰囲気で笑いながら発された言葉は、驚くには十分だった。


「お礼言われることなんかじゃないですよ!?むしろ紗弥さんみたいな人が俺なんかと仲良くしてくれることにお礼を言いたいくらいで…!」


慌てて否定すると、お母さんは一瞬目を見開いた後先程みたいに無邪気に笑い出した。


「ジャッカル君に質問してもいいかしら?」
「え?あ、はい」
「紗弥のこと、どう思う?」
「…え?」
「正直に、教えてほしいな」


ふふ、と微笑む姿に困惑しながらとりあえず必死に考えてみた。


(紗弥……は…、)


「最初は、一生関わることのない次元の人だと思っていました」
「うん」
「でもふとしたきっかけで話してみて、図々しいかもしれないけど俺が守りたいとか、頼ってほしいとか思うようになって」


そんな考えで友達になることを提案したはずなのに、一緒にいる時間が増えれば増えるほど、立場とか関係なく、一緒にいることが楽しくて。


「とても大切な、かけがえのない友達だと思っています」


そう言い切って顔を上げると、再び紗弥と同じ雰囲気を纏って微笑むお母さんの姿があった。



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