03




--幸村side--

「紗弥せーんぱいっ、俺もお友達ッスかっ!?」
「え?」
「何言うとるんじゃ、お前さんはただの後輩じゃ」
「えー!?」
「文句を言うな。下級生が上級生を友達扱いするなど、たるんどる!」


白神様の笑顔に感動していると、赤也が図々しい発言を始めた。

仁王や真田の言う通りだよ。


「むー…、いいっスよ!!紗弥先輩の友達はいっぱいいるけど、紗弥先輩の後輩は俺だけですもんね!ね、紗弥先輩っ」
「え?う、うん。そう、かな?」
「じゃあ俺特別じゃん!先輩達はどう頑張っても“友達”ですもんねーっ」


にっ、と笑った赤也に腹が立つ。唯一とか、特別とか何それ。羨ましい。


「どうしよう柳。なんで1年早く生まれなかったのかな。そしたら唯一の先輩になれたのに」
「…落ち着け幸村。年上だった場合、お前が彼女とこうして出会えた確率はほぼないぞ」


あ、そうか。ジャッカルと俺が友達だったから白神様とも出会えたんだ。


「ほんっとお前は図々しいんだよぃっ!後輩なら後輩らしく控え目にしてろぃ!」
「嫌ッスよ!俺も紗弥先輩と仲良くなりたいんで!」
「ブンちゃん。この生意気な口塞ぐぜよ」
「おっけぃ」
「ちょっ、何するんスか!羨ましいだけでしょー!?」


病室内では赤也が仁王とブン太によって押さえ付けられていた。


(よかった。理不尽に悔しかったのは俺だけじゃないんだね)


でもここは個室とはいえ病室だし、これだけ煩いとそろそろ真田辺りが限界だな。

あ、でも真田の制裁なんて白神様に見せられない。怖がらせたらどうしよう。



「……っ、ふ、あははっ」



不意に響いた笑い声に驚いて声の方に視線を向けると、白神様が顔を赤らめながら笑っているという信じられない光景がった。


「え、白神様…?」
「ご、ごめんなさっ、…っ、堪えれ、なくて…っ、後輩とかお友達とかで、そんなに必死になるとは思わなくて」


一生懸命笑いを押さえたのか、眉を下げて微笑む白神様に驚いたのは多分俺だけじゃなくて。


「…紗弥先輩って、話してみるとイメージ変わるッスね」
「え、そう…?」
「前はなんつーか、綺麗で神々しい!って感じだったんス」


俺にとっては今も神々しい存在であることに変わりはないんだけど、赤也が言いたいことはわかる。


「神々し…?…それはよくわかんないけど、イメージ変わったって最近よく言われるんだ。…それって、あんまりいい意味じゃないのかな…」
「まさか!すっげえ可愛いってことッスよ!神々しい先輩も可愛い先輩も好きッスけど、俺は今の先輩の方が仲良くなりたいって気持ち強いッス!」


素直すぎるくらい素直な赤也の言葉に、ほっとしたように微笑んだ白神様は本当に可愛くて。


(俺もジャッカルや赤也みたいに、早く仲良くなりたいな)


こんな白神様をずっと近くで見ていたジャッカルが、羨ましくて仕方なかった。



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