01
--幸村side--
「ご、ごめんなさい…」
何が起きているのか、頭がついてこない。
ジャッカルを問いただすだけのつもりが、赤也が白神様を連れてきた。
そして今、ジャッカルは白神様のお母様に連れられて、白神様が俺の病室に残されてる…?
「あ、の…。母が適当なこと言ってごめんなさい」
「い、いえ!!全然大丈夫です!!」
白神様に謝らせるなんて何をやってるんだ…!
「でも…。やっぱり、私戻りますね?」
苦笑しながらドアに向かおうとする白神様に慌てる。
(次会えたらちゃんと話すって決めたじゃないか、こんなチャンスないのに…!)
でも、なんて言って引き止めればいいんだ…?
「えー?紗弥先輩帰っちゃうんスかー?」
「え?」
俺の勇気をなかったものにするかのように、赤也の声が響いた。
「紗弥先輩のお母さんとジャッカル先輩が喋ってるんでしょ?じゃあ俺らもお喋りしましょーよっ!」
「え、でも…」
「いいッスよねー?先輩!」
赤也の声に全員が一斉に頷くと、白神様はようやく安心したような笑顔を見せてくれた。
(かわいい…っ)
赤也ナイス、と思ったけど、いざ引き止めてしまうと何を話していいのかわからない。それは他の奴らも同じようだった。
「紗弥先輩って、ジャッカル先輩と友達だったんですねー」
「うん、そうだよ」
「なんかすっげー意外ッス!」
「そう、かな…?」
「なんで友達になったんですか?」
この病室にこれだけ人がいるのに、赤也と白神様の声しか聞こえないなんて。
俺も含めて情けないな、なんて思っていると、赤也が一番聞きたかったことを聞いてくれた。
「えっと、ね。最初は多分、同情で友達になってくれたんだ」
照れたような笑いを零しながら白神様が発した言葉に、思わず耳を疑った。
「同情…?」
あ、柳達も同じだったんだ。みんな目を見開いて、今まで一言も喋らなかった口から無意識だろう言葉が出ていた。
だって、あのジャッカルが、こんなに完璧な白神様に同情なんてありえないだろう?
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