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「ジャッカル?なんとか言ってね?」
にっこりと微笑んだ幸村に、これ以上無言を貫き通すのも限界だと感じた。
俺らが勝手に隠したいと思っただけで、隠さなければならないわけじゃない。
第一、この空気が辛い。
「……あのな、」
「幸村部長ーっ!!」
ようやく口を開いた瞬間、病室のドアが勢い良く開いて赤也が入ってきた。
…こいつの空気の読めなさは尊敬するな。
「…?なんスかこの空気」
「…赤也、それがわかるなら黙っとけよぃ」
ブン太の言葉に俺と幸村以外が頷いたが、赤也はにぱっと笑って幸村の元に近寄った。
なんなんだこいつの勇気は。
「部長っ」
「なんだい赤也?俺が機嫌悪いのわからない?」
「そんな機嫌なんて一瞬でなおるくらいのお見舞いプレゼントあるんスよ!!」
「…プレゼント?」
「びっくりさせようと思って外に用意してるんですよ!待っててくださいね!」
訝しげに首を傾げた幸村に、赤也はもう一度笑って病室を出た。
今まで黙っていた連中も首を傾げて病室のドアを見つめた。
「部長っ、心の準備いいッスか!?」
もう一度ドアが開き、顔を覗かせた赤也に幸村は曖昧に頷いた。
直後、「ほら、」と外に向かって言ったかと思うと、半開きだったドアを勢いよく開けた。
その瞬間、全員が固まるのが分かった。もちろん、俺も含めて、だ。
「紗弥先輩に来てもらっちゃいましたっ」
「あ、はは…。ごめんなさい…」
「「「………え」」」
なんでだ。なんで紗弥が赤也と一緒にいるんだ。
紗弥先輩ってなんだ、いつの間に知り合ったんだ。
というか赤也。お前絶対無理矢理連れて来ただろう。紗弥涙目になってるぞ。
「…白神、様…?」
「嘘、だろぃ…?」
全員固まってる。赤也だけがにこにこ笑って、紗弥はどうすればいいのかわからずに恐る恐る病室内を伺っている。
…あ、目があった。
「ジャッ、カル君…」
「……紗弥」
名前で呼んだ瞬間、全員の視線が勢いよくこちらを向いた。
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