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あれから時間が経ち、放課後になりました。
アドバイスされて実行してみると、びっくりするくらい普通に話せました。
…本当に自分の感情が迷子になって戸惑っていただけなんて、なんか情けない。


「紗弥、今日も見舞いだよな?掃除当番変わってもらえばよかったのに」
「掃除時間くらいじゃ面会時間終わらないよ?…それに、ちょっと掃除当番楽しみだったんだ」


そう言って笑うとジャッカル君はわけがわからないと首を傾げた。


「実はね、私掃除当番って初めてなの」


苦笑しながら言うと、ジャッカル君はああ、と納得したような表情を浮かべた。

私に掃除なんかさせて汚れさせてはいけない、なんて考えてくれたおかげで私は生まれ変わってから学校で掃除をしたことがない。

好意なんだろうけど、自分もみんなと同じように使っている場所を人任せで掃除しないというのは罪悪感があったし、だるいとか言いながらも騒ぎながら掃除している楽しそうな輪の中にも入れなかったのは正直寂しかった。


「だからね、特別視されないことが嬉しいし、初めてのことをする時に、隣にジャッカルがいてくれるって本当に幸せなんだ」


恥ずかしくなってごまかすように笑うと、ジャッカル君が一瞬固まって顔を真っ赤にさせた。
…言っても恥ずかしい言葉だけど、聞いても恥ずかしいですよね。


「…っ、俺も紗弥と一緒で楽しいぜ?」
「…ほんと?」
「ああ。紗弥と友達になって、今まで以上に毎日楽しくなったしな」


そう言ってジャッカル君は爽やかに笑った後、私の頭にぽん、と優しく手を置いた。


トクン、


(………あれ?)


一瞬だけ、心臓が違う動きをした気がした。
不思議に思っていると、それを遮るようにジャッカル君が口を開いた。


「そうだ。今日掃除終わったら一緒病院行かないか?俺も今日は幸村の見舞い行く日なんだ」
「え?いいの?」
「当たり前だろ?今日はレギュラー全員で見舞いの日なんだが、俺は掃除で遅れるしな。紗弥さえよければ一緒行こうぜ?」
「うんっ!!」


ジャッカル君の誘いが嬉しくて、先程の疑問は一瞬にしてなくなっていた。

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