×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
 


 15




--柳side--

「幸村、どうした?」


幸村の見舞に訪れると、幸村が廊下に立ち尽くしていた。


「や、なぎ…」
「なんだ」
「どうしよ、俺、彼女と話しちゃった」


何かを思い出したかのように一気に顔を真っ赤にさせた幸村を思わず目を見開いて凝視してしまった。


「彼女、とはもしや」
「白神様がいたんだ」


ふわふわと微笑みながら話す幸村に驚きながら言葉を続けた。


「なぜここに?」
「お母様のお見舞いらしいんだ、隣の病室だったみたいでね。1週間の入院って言ってたから、きっとまた会えるよね」


母親の入院…、データをとらないとこんなにも不測の事態がおこるのか。

幸村を病室の中へ促しながら、ふと噂について思い出した。


「そういえば、あまり広まってはいないが彼女に関する噂が流れていたな」
「噂?」
「ああ、白神紗弥の様子が変わった、と。まあ俺の見解では変わったのは彼女の周囲の人間だが」


そう言いながら幸村を見ると、先程までとは違い眉間に皺を寄せて俺を見上げていた。


「…詳しく教えてよ」
「いや、まだ何も分かっていないんだ。分かっているのはI組の連中が彼女と話しているところを見かけたことと、何かを隠しているかもしれないことだけだ」
「I組…、ジャッカルに聞きなよ」
「いや、それは…」


部室で出た結論を話しても、幸村の機嫌が治ることはなかった。


「あのね、柳」
「…なんだ」
「彼女はとても優しい人だ。誰にでも平等に、同じ優しさを向けてくれる。…でももし彼女が誰かに特別な優しさを見せるのならば、それは俺じゃないと嫌なんだ」


俺がどれだけ彼女を思っているのか、柳も知っているだろう?


言い切って微笑んでいる幸村の言葉に、俺は頷くしかできなかった。


「ジャッカルも俺の彼女に対する気持ちは知ってるはずだからね。俺を差し置いて仲良くしてるなんてことがあったら許せない」
「…明日の見舞はレギュラー全員だ。ジャッカルは掃除当番で遅れるが、来るには来るからな。聞きたいのなら明日聞けばいい」
「そうだね、そうするよ」


にっこりと微笑んだ幸村と別れ、病室を出てため息をついた。

噂の正体を聞くことが、彼女を傷付けることにならなければいいが。

prev next