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「なんか、紗弥がそれだけ大変で疲れてるのに、ほんと勝手な勘違いで振り回すとか恥ずかしすぎるな」
ごめんな、大丈夫か?
とジャッカル君は優しく声をかけてくれた。
…正直、正直さっきから結構立ってるの限界なんです。
そんなことを言えるはずなく、大丈夫と口を開こうとした瞬間身体がふらつくのがわかった。
「うわっ、……っと、危ねえ」
目を開けると身体を支えてくれるジャッカル君が。
「あ、ご、ごめんなさ…っ」
「…ほんとに寝不足なんだな」
「え、ジャッカル君…?離していいよ…?」
慌てて離れようとしてもジャッカル君の腕が離れることはなく、戸惑いながら声をかけた。
「…ちょっと動くなよ?」
「へ?……う、わっ」
小さく呟いたジャッカル君の言葉を聞き直そうとした瞬間、自分の身体が宙に浮いた。
こ、これはもしかしなくても…
(お、お姫様抱っこ!?)
え、む、無理です!!
重た…くはないだろうけど、恥ずかしいです!!
「ジャ、ジャッカル君離して…っ」
「給水タンクの裏に行くだけだから、ちょっと我慢しとけ」
給水タンク!?な、なんで…
「よし、ついた」
パニック状態の私にお構いなく、ジャッカル君はそのまま腰をおろした。
そのまま、ということは私の体勢は横向きのままであり…
「あ、あの、ジャッカル君?これどういう状況、なの?」
お姫様抱っこやこんな状態は、私は漫画でしか見たことがないですよ!?
「膝枕。俺じゃ固くて寝にくいかもだけど、直接コンクリートよりましだろ?」
「お、起きるよ!!」
膝枕とか、そんな迷惑かけられません!!
と思って起き上がろうとした瞬間、ふんわりと肩を押された。
「寝とけって」
「で、でも…っ。ほら、授業とか」
「そんな状態で授業受けても何にも頭入んないだろ?」
「ジャッカル君も受けなきゃ」
「いいから」
何を言っても聞かないジャッカル君に困惑していると、ジャッカル君が口を開いた。
「…ただでさえきつかったはずなのに、俺が無理させたんだ」
「そんなこと、ないよっ」
「守りたいとか、支えたいとか思って友達になろうとしたのにな。その俺がこんなんじゃダメだよな」
「ジャッカル君…?」
「…俺、頼れる存在になれてるか?隣にいて、安心できるか?」
「…うん」
小さく頷くと、ジャッカル君は優しく笑った。
「俺と一緒にサボってくれないか?ゆっくり寝てていいから」
私が頷くと同時に、髪を優しく梳いてくれた。
…ジャッカル君。ジャッカル君の隣はすごく安心するけど、ジャッカル君の優しい行動はなんだかとても緊張します。
ぼやけた頭でそんなことを考えながら、気持ち良さに私は意識を手放した。
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