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ギィィィイ


少し錆び付いたような音とともに、爽やかな風が身体を包んだ。


「ジャ、ジャッカル君っ、なんで屋上?じ、授業は?」


無言で連れてこられた屋上で、私はとにかく戸惑っていた。


(怒ってる、のかな)


何も話さないジャッカル君に、途方に暮れて小さくため息を漏らした。

その瞬間、ピクッと掴まれた腕が動き、疑問に思いジャッカル君を見上げた。


「…悪い、無理矢理連れて来て」
「え、…だ、大丈夫だよ」
「こんなことやるから、嫌われるんだよな」


パッと掴んでいた手が離れ、ジャッカル君はその手で顔を覆った。


(…嫌われる、って、私に?)


「き、嫌わないよ!?ジャッカル君を嫌う人なんていないよ!?」
「…でもよ」
「何で屋上に来たのか、聞いても、いい…?」


自分の声が段々小さくなるのを感じた。
自分がジャッカル君を不快な思いにさせてしまったかもしれないと思ったから。


「…俺、多分すげえ醜いこと言うけど、いいか?」
「ジャッカル君の言葉なら、どんな言葉でも聞きたいよ」


本心から微笑むと、ジャッカル君は弱々しく笑い返してくれた。


「…悔しかった、紗弥が悩んでることを聞いてやれないことが。段々原因が俺かもって思ったら不安になってきて、飯も断られて俺なんかしたんじゃないかって」


その言葉に驚きと同時に申し訳なさを感じた。
でもそれ以上に、私と一緒にいたいと同情じゃなく思ってくれているのかと思うと、不謹慎だけど嬉しかった。


「だからさっき勇気出して聞いてみたら、“勘違い”“ごめんね”って、結局なんだったのかわかんねえし、それで話終わらせようとしてるみたいで、なんか嫌で。…だから気が付いたら引っ張ってた。ちゃんと話したくて、……ごめんな」


弱々しく気まずそうに話すジャッカル君を見て、思わず手を握った。


「…っ!?」
「ごめんなさい、そんなつもり、本当になかったの」
「…紗弥?」


さっきとは表情を変えて、心配そうに私を見てくれているジャッカル君の手を、無意識にギュッと握りなおしていた。



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