09



ニャア……

いつも通りの鳴き声に顔をあげた。


「…ちーちゃん、」


擦り寄ってくるちーちゃんは、暫くすると不思議そうに私を見上げた。


「…ああ、今日は久しぶりに2人だねえ」


ふふ、と笑ってちーちゃんを撫でると、ちーちゃんは気持ち良さそうに喉を鳴らした。


「…、ふあ…っ。…こんな状態でジャッカル君と一緒にいると、退屈させちゃいますもんねー」


いつの間にか眠ったちーちゃんを見つめながら、私は静かに目を閉じた。




予鈴が鳴って教室の扉を開けると、全員が一斉にこちらを向いた。
…え、なんですか。

驚いて固まっていると、ジャッカル君が真剣な表情で近付いてきた。
え、本当になんなんですか!?


「…紗弥」
「は、はい…」


よく見れば、ジャッカル君は真剣な、というより少し辛そうな表情をしていました。


「俺、なんかしたか?」
「な、にが…?」


どうしたらいいんでしょう。全く話が読めません。


「…俺、紗弥に避けられるようなことしたか?」
「避け…っ!?」


え、ジャッカル君みたいな人を避ける理由なんてないでしょう。


(…というより、話の空気的に私が避けたことになってる…?)


なんで、と口を開くより先にジャッカル君が私の手を掴んだ。


「俺といるのが嫌なら言ってくれて構わないんだ。でも、理由が知りたい」
「ちょ、え!?」
「それとも避けてるのは俺だけじゃないか?一人でいるのがいいって思ったのか?」


ジャッカル君がいつになく強引なんですが…。

…そんな辛そうな顔、しないでください。


「あの、ジャッカル君、」
「俺らはみんな、紗弥のこと大切だし心配なんだ。何か悩んでるならできることはしたいし、その悩みの原因が俺らならちゃんと知りたい」


な、悩み…?心配?


(…あ、もしかして)


「…紗弥、」
「多分、…か、勘違いです」
「……え?」
「勘違い、させてごめんなさい。でも、ほんと大したことじゃないから、気にしないでほしい、な」


頭を下げるとジャッカル君達はぽかんとしていた。


「…あ、チャイムなりますよ」


苦笑しながら席に着こうとした瞬間、パシンと腕に温もりがきた。


「悪い、2人分のノートと言い訳頼む」
「えっ、は、え!?」
『りょーかい、話せる程度で後で教えてね』
「ああ」

焦る私の声なんて聞こえないように、ジャッカル君は私の腕を掴んだまま廊下を進んだ。

混乱している私の頭に、チャイムの音が鳴り響いていた。

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