04
『白神、今ちょっといいか?』
放課後帰宅する準備をしていたら担任の先生から声をかけられた。
担任だけだけど、先生からも呼び捨てで呼んでもらえるようになりました。
I組の人達ってみんな優しすぎでしょう。
「はい、なんですか?」
『悪いんだけどな、桑原にこのノート届けてくれないか?』
ポン、と渡されたノートを首を傾げて眺めていると、担任は苦笑しながら言葉を続けた。
『桑原のだけ返却し忘れてたんだよ。まだ教室にいないかなと思って持ってきたんだけどな。俺今から会議でテニスコートまで行く時間ないんだわ』
「そういうことですか、わかりました」
『悪いな、頼んだ』
先生はそう言うと私の髪をくしゃっと撫でて去って行った。
…一々言動が男前な先生だなあ…。
(というか、初テニスコートだ…)
忘れていましたが、キャラクターがいっぱいいる所ですよね。まあ、関係ないですけども。
それよりも、普段と違う場所でジャッカル君と会うことに緊張する。
(…よし、行かなきゃ)
少し気合いを入れて私は教室を去った。
(うわ、すごい人だ…。ジャッカル君は…)
テニスコート周辺には沢山の人が。
近付けないと思った瞬間、フェンスの周りがざわめいた。
『…っえ、白神様!?』
『白神様がコートに!?』
『嘘っ、私こんなに近くで見たの初めてっ』
久しぶりに聞いた私への言葉に思わず苦笑した。
最近はI組のみんなと一緒にいたから気にすることもなかった。
(これが、普通の反応だよね)
私だって私を見たらそういう反応をすると思う。
…やっぱりジャッカル君達は不思議ですよ。
ガシャン……ッ
そんなことを考えていたら、私の後ろで何かが落ちる音がした。
驚いて振り返るとそこには赤い髪の男の子が。彼の足元にはラケットバックがあった。
「……っ、白神、様!?」
名前を呼ばれて、彼が私に驚いて荷物を落としたのだと知った。
…申し訳ないです、ほんと。
固まる彼のラケットバックを拾い軽く砂を叩いて彼に差し出した。
「…あの、大丈夫ですか?」
「う、あ!!だ、大丈夫です!!って、ラケットバック!!うわ、すみません!!」
「あ、いえ…」
顔を真っ赤にさせて喋る彼を見ていると、思わず笑ってしまった。
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