03



クラスの皆と仲良くなってから1週間。
男の子たちも気軽に話しかけてくれるようになり、14年ぶりの幸せを噛み締めています。


「紗弥、ちー来てるぞ」
「ちーちゃんっ!!」


みんなと仲良くなってからも、ジャッカル君は変わらず接してくれました。

正直、同情で友達になってくれたから他に友達ができると離れてしまうんじゃないかと不安だったんですよね。

でもそんなことは全くなく、教室でも今も、当たり前のように接してくれて。
それが何より嬉しかったんです。

他に沢山の友達ができても、私にとって一番大切で感謝しているのはジャッカル君だから、こうやって毎日昼食を2人で食べている時間が一番幸せです。


「ちーちゃん、すっかりジャッカル君に懐いちゃったね」


ちーちゃんはあれからも毎日ベンチに来て、すぐにジャッカル君に覚えられました。
ジャッカル君の動物からの懐かれ方はハンパじゃなかったです、はい。

そのおかげで、ジャッカル君を放置することもなく、ちーちゃんと3人で遊べて今までの何倍も幸せです。


「猫って仁王みたいな奴ってイメージだったんだけど、ちーは全然違うよなあ」
「…仁王君って、テニス部の?」
「ん?ああ、よく知ってんな。気まぐれで何やってるかわからないような奴なんだよ」
「へえ、…確かに猫って気まぐれな子が多いかも」


ジャッカル君の膝で眠るちーちゃんを撫でながら、今まで出会った猫を思い浮かべた。


「ジャッカル君が部活の人の話するのって珍しいね」
「え、あ、そうか?…まあ、ろくな話ないからなあ」


苦笑しながら話すジャッカル君を見て首を傾げた。


「個性強すぎて、とばっちり受けるんだよなー」


そう言いながらジャッカル君は部員の人の話を続けた。

ペアの丸井君がわがままだとか、副部長の真田君の制裁がきついだとか、後輩の切原君が先輩のジャッカル君をこき使うだとか…。


「…ふふ」
「…どうした?」
「ジャッカル君、テニス部のこと大好きなんだね」
「は?」


そういうと、ジャッカル君は驚きの声をあげた。


「だって、普段聞き上手なジャッカル君がそんなに生き生きと人のこと話してるんだもん。大変なんだろうけど、楽しそうな顔してるよ」


笑いながらそういうと、ジャッカル君は目を見開いた。

いつも吃ってしまう私の話を静かに聞いてくれるジャッカル君と違い、愚痴のようなのにキラキラとした表情で話す彼はとても輝いてみえたのだ。

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