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紗弥がクラスの奴らと仲良くなってから1週間が経った。

女子と仲良くなったのをきっかけに、男子もびくびく話しかけ、今では苗字を呼び捨てで呼ぶ程軽く話せる仲になっている。



――いい?紗弥の雰囲気が優しくなったのなんて、学校中がすぐに気付くよ。そしたらテニス部が放っとくわけないでしょ?純粋なあの子がテニス部の手にかかったらどうなるか、ジャッカルが一番わかるでしょ?だから噂にならないためにも、紗弥を守りたいんなら紗弥を隠すよ!!



1週間前、クラスの女子に詰め寄られて言われた台詞だ。

確かに、テニス部の奴らが幸村を筆頭に紗弥を崇拝しているのは有名だ。
負けず嫌いのあいつらが、自分たちを差し置いて紗弥と仲良くする奴を許すとは思えない。
意地でも自分たちの側に置こうとするのが目に見えている。

そうなると必然的に俺が紗弥といられる時間は減るわけで…

それはなんとなく嫌だという俺の気持ちで、クラスの奴らの言葉に乗った。


『紗弥っ、これ食べるっ?』
「いいの?ありがとう」


おかげでI組は休み時間も扉を閉めっぱなしの閉鎖的空間となった。
そのうえ紗弥を守るという目的の元、4月だというのにクラスの団結力は完璧だ。


『紗弥っ、移動教室いこっ!』


こうした少しの移動の時は、紗弥の周りを女子が囲む。

一度俺が一緒に行こうとした時、

『ジャッカル、あんたは自分がテニス部レギュラーってこと忘れてない?目立つのよ。一番目を付けられたくないテニス部からも一番注目浴びるのよ!』

と言われてしまい、引き下がった。

おかげで俺が紗弥と過ごす時間は授業中のこそこそした会話と昼休みの中庭での昼飯のみだ。


(…いや、嫌なわけじゃねえけどよ)


それでも、多分クラスの連中の誰よりも一緒にいるとは思う。
友達が増えて目に見えて喜んでいる紗弥を見て、もっと一緒にいれたら、とか考えるのも野暮だしな。


(それに……)


「…っ、ジャッカル君、一緒にお昼食べてもいい?」


もう一週間以上も毎日飯を一緒に食ってるのに、期待と不安を混じらせた表情で昼休み開始のチャイムと同時に一番に俺に声をかけてくれる紗弥を見たら、くだらない感情も全部消える気がした。


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