18
「…紗弥、昼休みどうだった?」
5限の授業中、紗弥に話しかけた。
「どう、って?」
「あいつらと何話したんだ?」
首を傾げる紗弥に問い掛けた。
(…ん?)
…俺、鬱陶しくないか?
別に紗弥が誰と何話していようと構わないよな。
いや、でも今まで誰かと関わることがなかった紗弥が心配だったのは事実だし…。
(たかが友達の癖に、とか思われたりして…)
やらかした、という気持ちを押さえながら紗弥に顔を向けた。
「…っ、あのねっ、みんなと友達になれたの」
嫌な顔をされると思っていたのに紗弥が俺に向けたのは満面の笑みだった。
「友達?あいつらと?」
「うんっ」
嬉しそうに笑う紗弥を見て、少し複雑な気持ちを覚えた。そしてそのことに焦りを感じた。
(俺、紗弥の唯一の友達ってことが嬉しかったのか…?)
一番近い存在なんだって、思いこんでた…?
醜さにも似た感情を押し殺していると、紗弥が口を開いた。
「ジャッカル君のおかげだよ」
(…え……)
驚いて顔をあげると、今までにないくらい幸せそうに微笑む紗弥がそこにいた。
「あのね、ジャッカル君と話し始めて、少し話しかけやすくなったんだって。それにね、ジャッカル君の話してると、話に詰まることもなかったよ」
まるで子供が親に話すように、嬉しそうに一生懸命言葉を紡ぐ紗弥に、俺は固まったままだった。
「ジャッカル君がいなかったら、みんなと友達になることなんてなかったんだよ。ジャッカル君が昨日話しかけてくれてから、いいことばっかりなの」
もう一度、紗弥が俺の目を見て微笑んだ。
「…一番最初に友達になったのが、ジャッカル君で本当によかった」
(…も、無理……)
返事をすることもなく机に突っ伏した。
自分を醜く、そんな自分を嫌だと感じていたのに。
紗弥はそんな俺の考えを微塵も感じることなく、俺に最高の賛辞をくれた。
(…俺が、紗弥にとって一番近いって、自惚れて喜んでもいいかな…)
「ジャッカル君?」
「…悪い、今顔見ないで」
「?うん、わかった」
多分不思議がってるんだと思う。
でも、俺絶対顔真っ赤だし、…ついでに、嬉しすぎて泣きそうだ。
「…紗弥」
「え?」
「…ありがとう」
俺も、紗弥と友達になれてよかった。
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