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『なー、ジャッカル』
「…なんだよ」


紗弥が連れていかれ、仕方なく鈴木の元へ向かうとなぜかクラスの男連中が揃っていた。


『白神様と飯食えなかったからって拗ねんなって!』
「なっ、…ちげえよ」


(拗ねたり、はしてないよな)


紗弥と食べるつもりだったから、拍子抜けしただけで。


『…あのさ』
「なんだよ、英語か?」
『いや、ジャッカルって、白神様のこと好きなの?』
「…?普通に好きだけど。紗弥のこと嫌いな奴とかいないだろ?」
『…あー、そうじゃなくて』
『恋愛的に、って意味』


ゴホッと飲んでいたお茶がむせた。
…こいつら、何言ってんだ?


「…恋愛的に、だあ?」
『そうそう、どうなの?』
「…あのなあ、言っただろ。俺が近付いたところでどうにもならねえって。そういう目で見てたらまず近付けねえよ」
『…ということは、そういう感情はなし?』
「ああ」


呆れたように返事をすると、つまらなそうな声が返ってきた。


『でもよ、ジャッカル幸せそうだぜ?』
『あー、わかる』

幸せそう?
まあ、紗弥といると楽しいけど。


「…癒されるって言った方がいいかな。恋愛的にとかじゃなくて、後輩とか下の兄弟を可愛がってる感覚だな」
『…あー、ジャッカル面倒見いいもんな』
『まさかそれを白神様に発揮するとは思わなかったけどな』


まあ、確かにそうだな。
俺は紗弥とどうなりたいとかじゃなくて、守りたいとかの気持ちが強いわけだし。

冷静に考えると、それをあの紗弥に思うなんて、俺いろいろ勇気あったな。


『…どう思うよ?』
『…んー、これはガチでないな』


小声で何かを話す鈴木たちを気にすることもなく、俺は弁当を食べた。

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