09
--クラスメートside--
昨日の昼休みからジャッカルと白神様の様子が変わった。
誰もが恐れ多くて“自分なんかが近付いちゃいけない”と思っていた彼女に
ジャッカルは“俺なんかが近付いても何も変わらない”と近付いた。
ジャッカルの“なんか”の使い方は、今まで誰もしなかったもの。
昨日はただびっくりして目の前の光景を疑っていたけど、1日経っても挨拶を普通に交わすジャッカル達を見て、全員で問い詰めた。
『お前らも話してみろよ。意外と可愛い人だぞ?』
そう笑って言ったジャッカルに、それは無理だと全力で否定したものの、ジャッカルの言葉の意味を知りたいと思う気持ちは消えなかった。
ジャッカルと白神様の様子を観察し始めたのはクラス全員に言えることで。
観察していると、ジャッカルの言葉の意味がほんの少しだけ分かった気がする。
凜として気高い存在だと思っていた彼女は、ジャッカルにふんわりと穏やかな微笑みを向けていた。
時折恥ずかしそうに笑ったり、ジャッカルの言葉に戸惑いながら返事をしたり。
(……まじか)
そうやって観察していた4限のこと。白神様は眠そうに目を擦っていた。
そんな白神様の様子が信じられずにいると、もっと信じられないことが起きた。
『…うわっ、ジャッカル…!』
『白神様の頭撫でるって…!!』
俺の近くの席の女子達が小さく声をあげたのが聞こえた。
『…え、白神様の顔赤…!』
恥ずかしそうに顔を赤く染め、机に俯せた様子に全員が驚いた。
すぐにジャッカルも顔を赤くし、掌で口元を隠したところを見て、また女子の声があがった。
『友達って言ってるけどさ、付き合ってないのかな…?』
『流石にそれはないでしょ!ジャッカルが友達って言ってるわけだし』
『そっかー…、でもさ、今日見てて思ったけど白神様ジャッカルのこと好きでもおかしくないよね!』
『わかる!一生懸命喋ってるとことか、女の子が好きな人と喋ってるみたいだった!』
『っていうか、ジャッカルもあれはないわ。あんな頭の撫で方されたら好きじゃなくてもキュンとくる!』
『あれはやばいよね!まあジャッカルの性格上、切原君を可愛がるのと同じ感覚でやってそうだけど』
…白神様がジャッカルを?
あんな尊い人が恋をするなんて想像できないけど…
そう思いながら俺はジャッカルに声をかけた。
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