08
(これは、やばい)
ジャッカル君から頭を撫でられて、恥ずかしくなって顔を伏せた。
(その撫で方は、かっこよすぎる…!!)
単純?好きに言ってください。
どんなに容姿が良くても、中身は私なんですよ。
こちらの世界の中学生がどれだけませてるかは知りませんけど、私はただの中学生だったんです。
こういうことは慣れてないし、普通に照れる。更に言えば、ときめくポイントでしょう?
普通の女子中学生が、誰かを好きになるきっかけってきっとこんな単純なことです。
っていうか、少なくとも前世の私はそうでした。
(…いや、好きになったりは、しないはずだけど)
自分がそういう目で見られないことくらい理解しているし、だからこそ自分もこの世界で恋愛をする気はない。
それでもドキドキすることには変わりなく、熱くなる顔を鎮めるようにギュッと目を閉じて意識を飛ばした。
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『…っえ!?白神様寝てんの…っ!?』
「ああ。起こすなよ」
『当たり前だろ!!そんな自殺行為誰がするか!!』
俺の顔の熱が治まった頃、隣の紗弥の静かな寝息が聞こえ始めた。
『…私、初めてこんなにしっかり白神様の顔見たかも…』
『ね、なんか見ちゃいけない気がするけど…。見ちゃうよ』
紗弥が寝たことに気付いたクラスの奴らが、驚いた後小声で話し始めた。
『…睫毛なげえ、肌白…』
『美しすぎるだろ、これは』
普段直視しづらい分、つい覗いてしまうといった状況に俺は軽く笑った。
『ほんとに白神様も寝るんだな』
「…当たり前だろ」
『だって学校の机よ!?似合わないっていうか…』
『しかも授業中になんて、今まで絶対なかったでしょ!?』
教師ですら驚いているのか、ざわめく生徒に注意することもなかった。
(…確かに、似合わないしイメージはないが…)
ふと紗弥の方に視線を向ける。
似合わないことには変わりないが、どこか安心したような幸せそうな顔で眠る無防備な姿に、思わず微笑んだ。
(少しは心を許してくれているんだろうな)
自分の言った通りに隣で眠ってくれている。
紗弥にとって、少しでも安心できる存在になれているかもしれないと思うと、嬉しく思わずにはいられなかった。
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