05



「紗弥、今日は一日どうだった?」


夕飯の席で母からいつもの質問。どうだった、と言われても私が答えるのは“ちーちゃんが可愛いかった”とかそんな話しかなかったんですけども。


(でも、今日は…)


「どうしたんだ?」
「…あのね。と、友達が、できた」


小学生みたいな報告に気恥ずかしさを感じていると、父も母も目を見開いて固まった。


「と、友達!?」
「うん」
「……うわ、どうしよう母さん!!そんなおめでたい日に俺肉じゃがなんて作っちゃったよ!!」
「いやいや、肉じゃが美味しいよ?」
「ケーキとか買ってくるべきかしら、どうしましょう」
「いらないから。落ち着いて」


父も母も、私が世間からどんな目で見られているのか知っていた。
それは悪い視線じゃないから文句を言うこともできなくて。
寂しい思いをしているだろうと、他の人がくれない愛情をたくさん与えてくれた。

だからこそ、こんなに喜んでくれている。


「…紗弥、よかったわね」
「…うん。ありがとう」
「紗弥に友達かあ、きっとすごくいい子で可愛い子なんだろうなあ」


……ん?
いい人なのは否定しないが、可愛いというのは…。


「可愛いんじゃなくて格好いいんだよ」
「ボーイッシュな子なのね」
「会ってみたいなあ。今度連れてきなさい。あ、でも定食屋ってイメージが…」


…うん、これは勘違いしてます。


「…あのね、友達って男の子だよ」


私の一言に再びぴたりと固まる二人。次第に母は面白そうに微笑みだし、対称的に父は顔が青ざめていった。


「…へえ、ふうん。男の子なの」
「…何?」
「〜〜っ、ダメ!!ダメだよ紗弥!!男の子なんて父さんは反対だ!!」
「なんで?」
「だ、だって…っ!!」
「ねえ紗弥?今度うちに連れてらっしゃいね?」
「ダメだよ母さん!!男なんて!!」
「だからなんで?ジャッカル君すごくいい人だよ?」
「あら、ジャッカル君て言うの?」
「外国人なんて……!!」
「「お父さん/あなた、うるさい」」
「うっ、うう…っ」


まあ家に呼ぶなんて図々しいことはできないですけど。

お母さんは何か勘違いしてる気がするし、お父さんに至っては落ち込みすぎです。

大丈夫ですってば。ジャッカル君のような素晴らしい人と私なんかが、2人が考えているようなことにはなりません。


prev next